読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『D・H・ロレンス全詩集【完全版】』(彩流社 2011)

生命の本来的な活動力を損なう文明の病に徹底して抗議するロレンスのさまざまな文筆活動の最も根本にある詩的精神の純粋な発露である詩作品の集成。生涯書きつづけられた詩作を全篇読み通してみると、ロレンスという作家の大きさがよく分かってくる。100年も前の作品でありながら、混迷の度合いをますます深める21世紀の現在において、多くの作品がますます精彩を放ってきている。切り口も多彩で、感嘆することしきりであった。
古典ともいえるロレンスの作品の新訳、なかでも商品としては成り立ちがたい詩作品の全訳を出すということの、関係者の熱量まで伝わってくる、ずっしり重い、しっかりとした主張の込められた一冊である。

不道徳性

不道徳ということは
死んだも同然に
太陽が消え去り
他人の中にある
太陽を追い出すことに忙しいこと。

 

太陽は生命のエネルギーを吸収して光り輝き、生命は太陽の光を受けてさらに光り輝くという思想を持ったロレンスの魂の声が聞こえてくるようである。

www.sairyusha.co.jp

【付箋箇所】
 54 大学の窓から
 67 最後の時間
 85 コロー
 88 変貌
106 しつけ
113 愛の冷気
121 遺してくれたもの
127 手持ち無沙汰
130 解放
184 古い夢と新しい夢――新しい夢
195 当世風の殉教者
196 海
244 一人の女からすべての女へ
251,256 新天地
275 たそがれの国
280 糸杉
282 裸のアーモンドの木
288 紫色のアネモネ
300 聖マタイ
302 聖マルコ
322 爬虫類
330 亀の家族関係 
337 亀の叫び
380 我々の一日は終わった
400 我々が所有しているものは命だけ
403 おお、革命を起こせ
411 注意せよ、おお、若者たちよ
414 自己憐憫
427 我々の悪の根源
430 金の狂気
438 平和と戦争
443 空虚
445 欲望は死んだ
450 無
454 楽観主義者
455 社会に対する恐怖が諸悪の根源である
462 相対性
465 不道徳性
525 孤独
531 自由な意志
535 神と聖霊
551 救済すべき魂
552 神々のような人間たち
557 孤独でさびしく、心細い――ああ
559 ロボットの感情
562 神々の名を呼べ
567 続けなさい
568 去勢
572 ブルジョアボルシェビキ
577 最良のものだけが重要なのだ
596 創造の仕事
597 肉体のない神
604 命の息
626 忘れる
642 わが神、わが神、なぜ私を見棄てたのですか
689 ケツアルコアトルがメキシコで見たもの
692 ドン・ラモンの歌
695 ようこそ、ケツアルコアトルのもとへ
703 死者の歌
716 若者は公平であることを望む
725 それにもかかわらず
731 愛より深遠なもの

747, 754, 772


目次:

序論 「D・H・ロレンス――仮面をつけない詩人」 ヴィヴィアン・デ・ソーラー・ピントー 著 大平章 訳
押韻詩集 大平章+加藤英治 訳
無韻詩集 
 『どうだ、僕たちは生き抜いたぞ』』 橋本清一 訳
 『鳥と獣と花』 戸田仁+大平章+原良子 訳
『三色すみれ』 青木晴男+市川仁
『いらくさ』 平野ゆかり 訳
『続・三色すみれ』 麻生えりか 訳
『最後詩集』 小田島恒志 訳
未収録の詩
未収録の詩 中澤はるみ 訳
未収録の詩-『羽毛の蛇』からの詩編 田部井世志子 訳
未収録の詩 田部井世志子 訳
未収録の詩-『三色すみれ』補遺 田部井世志子 訳
詩集の序論・序文・補遺 大平章+小田島恒志 訳

D・H・ロレンス
1885 - 1930

参考

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com