読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

平松洋解説 新人物往来社編『ギュスターヴ・モローの世界』(新人物往来社 2012)

A5判159ページにモローの代表的作品145点をオールカラーで収めた手軽だが充実した作品集。解説文は章ごとにわずかな分量を占めるに過ぎないが、要点を押さえてギュスターヴ・モローの人物像と作品傾向を伝えているために、ためになる。アカデミックな絵画技法を美術学校で学ぶ一方、反アカデミーのドラクロワやシャセリオーに心酔し、30歳を越えたところで私費留学したイタリアでは古典の模写に明け暮れるなかカルパッチョにいたく魅了される。象徴主義の代表的な画家で幻想的な作風にばかり気を採られてしまうが、アカデミックな歴史画の延長線上に花ひらいた作風であることにも目が開かされる。多くは神話や聖書を題材とした人物画で静物画や風景画あるいは肖像画がほとんど見当たらないのも、歴史画(物語画)が絵画の最高峰という守旧派的な認識を持っていたためかもしれない。モローから多大な影響を受けたオディロン・ルドンとの違いも歴史画(物語画)に対する思いの違いが大きいのかもしれない。


同じ主題で複数の作品を残したモローを多くは見開きで比べながら観賞できることも本書の魅力の一つで、有名な踊るサロメと洗礼者ヨハネの斬首に関しては14点を見ることができる。

ネット上に出ている評価もおしなべて高く、満足感を得られる確率はかなり高い。

www.kadokawa.co.jp


目次:
1 若き日の絵画
2 ギリシャ神話の絵画
3 キリスト教の絵画
4 さまざまな絵画
モロー、もうひとつの絵画の系譜

ギュスターヴ・モロー
1826 - 1898
オディロン・ルドン
1840 - 1916
平松洋
1962 -