管啓次郎は現時点で65歳、明治大学大学院教授、ミネソタ大学アジア中東研究学科客員主任教授で詩人。今もっとも生産的で注目されている詩人のひとりであるだろう。文書空間と現実世界、動物や昆虫や樹木がいる自然界と人間界とを、行ったり来たりというか軽々と同時に生きていることが感じられる詩風で、いい具合に力の抜けた自在さが羨ましい。抒情詩と物語詩の中間領域を押し広げて、どこにでも顔を出しながら言葉を発し言葉を聞いて、言葉による瑞々しくかつノスタルジックな世界をつくりあげている。
収録されているのは2021、2022年の作品を中心に全23篇。柔らかくて粒ぞろいの詩篇たち。どの作品も悪くないが、特に印をつけたのは以下の詩篇たち。
シャルル猫
ウォンバット
コヨーテとオサムシ
木について
ウェゲナー
小さな牛たち
蟻
草原に行こうよ
ほとんどがウェブサイト「水牛」に月に一篇ずつ連載されていたもので、スマホで寝る前にちょこちょこ読んでいたものであったが、紙の本で、縦書きの文字で、まとめて読んでみると、ウェブとはまた違ったゆったりとしながら芯の強い詩の力を感じ取ることができた。
【目次】
一週間
To the Open Ground
千年川
Water Schools
三島/長泉詩片
東京詩片
ブリキのカメラ
夜の道
外に出たフィルム
犬と詩は
犬の詩四つ
犬ときつね
猫の詩3つ
シャルル猫
ウォンバット
コヨーテとオサムシ
里芋、大根、大豆
木について
ウェゲナー
小さな牛たち
蟻
草原に行こうよ
こころ
管啓次郎
1958 -