読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

編訳:小笠原豊樹+関根弘『マヤコフスキー選集Ⅱ』(飯塚書店 1964)

第一巻の詩論「いかに詩をつくるか」で取り上げられたエセ―ニン追悼詩篇「セルゲイ・エセーニンに」が収められている。詩論では冒頭の4行が取り上げられるのみで、それが詩篇全体、四行詩であるかのようであったが、実際は変則形式の273行の詩篇で、資質も思想も異なる間柄であったにもかかわらず、優れた詩人同士の連帯感からか、30歳という若さで酒に溺れ破滅して亡くなった抒情詩人を、緩やかに非難しつつも愛を込めた追悼によって詩人としての復権を図っているところが胸を打つ。エセーニンの詩を知らない人にも、エセーニンの詩を読んでみようかと思わせる。

ぼくらの惑星(ほし)は
           快楽の
              設備が不足だ。
必要なのは
     よろこびを
          未来から
              奪いとること。
この人生で
     死ぬことはむずかしくない。
人生をつくることは
         はるかにむずかしい。

プロレタリアートにとって有益な文芸作品を提供しようとはたらいていたポジティブで良質な詩人ならではの詩の傾向が見て取れる。ただ、各詩篇や「これについて」のような長編詩、「南京虫」のような戯曲を読んでみると、ソヴィエト政府の御用文学にはおさまりきらない芸術性が顔をのぞかせ、政権に近いグループから非難が起こってしまう運命にあることも、また納得できる。


【目次】
ぼくは愛する
詩篇(一九二三~二五)
 最初の鉄鉱を掘り出したクルスクの労働者に
 キエフ
 記念祭の唄
 タマーラとデモン
 五月
 ぼくの旅行
 街
 ヴェルサイユ
 ジョレス
 別れ
これについて
詩篇(一九二五~二七)
 大西洋
 深い所で浅い哲学
 ブラック・アンド・ホワイト
 摩天楼断面図
 帰郷!
 セルゲイ・エセーニンに
 イギリスの労働者に
 財務監督官と詩を語る
 汽船と人間、同志ネッテに
 護送船「ソヴェト・ダゲスタン」と「赤いアブハジヤ」がオデッサの波止場で語ること
 記念祭をやめろ!
 いちばんいい詩
 レナ
 バクー
 奇蹟だ!
 子供のための詩
 何がいいか何がわるいか
 海と燈台についての私の小さな本
 五月の唄
南京虫(戯曲)
評論(一九一四~二七)
 二人のチェホフ
 だれでもこの本を読め!
 アレクサンドル・ブロークの死
 ヴェ・ヴェ・フレーブニコフ
 天上から地上へ
 討論会「青年のデカダン気分」における演説


【付箋箇所(上下二段組み、上段a,下段b)】
66a, 70a, 82a, 107b, 122b, 146a, 211b, 223a


ヴラジーミル・ヴラジーミロヴィチ・マヤコフスキー
1893 - 1930
小笠原豊樹岩田宏
1932 - 2014
関根弘
1920 -
セルゲイ・エセーニン
1895 - 1925