長く出版社に勤め慎ましやかな生活を送りながら独り詩を作り集まって連句を巻いていたところに、40代もおしつまった1993年、小説家の車谷長吉と結婚し共同生活をはじめたことで作風が変わっていくのがよく見える詩選集。小説家の夫が強迫神経症に陥った時のことを題材にした詩集『時の雨』では読売文学賞も取っていて、かなり名の知られた詩人・作家ではあるが、どちらかといえば個性を主張するようなタイプの書き手ではなく、静かで簡素な日々の営みの中から心に叶う言葉を丁寧に掬い上げている書き手である。
特に感心したのは、砂、子どもの時間、湯飲み茶碗などの詩篇。
ゆっくりとした懐かしい時間の流れに身を任せるような感覚にしばしばなっていた。
【目次】
〈海まで〉から
〈凪〉から
〈花まいらせず〉 全篇
〈幸福な葉っぱ〉 全篇
〈普通の女〉から
〈時の雨〉全篇
〈貧乏な椅子〉から
〈雲のフライパン〉から
詩論・エッセイ
五十歳の詩人
ぎりしあ悲劇残欠と現代詩
人魚好き
しみじみ
鬼の雪隠
高橋順子
1944 -
車谷長吉
1945 - 2015