読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

狩野博幸『もっと知りたい 河鍋暁斎 生涯と作品』(東京美術 2013) 蛙と妖怪に心をほぐされる

かわなべきょうさい(1831 - 1889)技術にも発想にも優れた画人。 先日読んだ山口晃の『ヘンな日本美術史』(祥伝社 2012)のなかの「やがてかなしき明治画壇」の章でとりあげられていたので、不遇の人、屈折をもってしまった人かなと予想していたところ、ま…

エトムント・フッサール『ブリタニカ草稿 現象学の核心』(原書1927 ちくま学芸文庫 2004 谷徹訳) フッサールとハイデッガーの共同作業の不成立からみる方向性の違い

フッサールが『ブリタニカ百科事典』の求めに応じて「現象学」の項目のために執筆した四つの草稿を集成。フッサールの論文は決定稿よりも草稿のほうがわかりやすい。著作でいうと最終著作『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(中公文庫)よりも草稿を…

【雑記】いたみ、とめる

※東証システムダウンの日、わたしもダウン気味で喘ぐ いらだちのげんいんはかんせつがいたいこと たえてやりすごすだけにしたいのにおとがめ みのたけをけずるおもいもうまれささくれる

谷川俊太郎『ベージュ』(新潮社 2020)米寿の記念の詩集、生成の色の冷えた輝きにしずかに撃たれる

八十八歳になる日本語詩人がこころのうごきを書き留めた詩篇、31篇。生きることの哀感がこころの底を流れるなかで、凛として折れも萎れもしない姿勢がうかがわれる。楽園というにはほど遠い世界のなかで。「本音」を言い当てられているようなことばの数々…