19世紀後半以降に登場したオーディオヴィジュアルの記録再生と配信の技術とそれがもたらした精神の変容を精神分析的アプローチから解き明かし、多様性と自由度の高い未来へ向けて解き放つことが二人の哲学者の共通の狙い。
本書はデリダとスティグレールのメディアをめぐっての師弟対談(というよりも弟子から師匠へのインタビュー)とそれぞれのエッセイで構成された一冊。基本的に口頭での発言から編集されたものであるため、デリダの晦渋さは若干弱まっている感じではあるが、聴衆者へのサービスよりも互いの思考をぶつけようとしている二人の哲学者の言葉は、独特の言葉遣いとともに、注意力をもって理解するよう読者に強いているところがある。読みすすめるのにはちょっと時間がかかる。
【目次】
第一部
「人為時事性」ジャック・デリダ
第二部
「テレビのエコーグラフィー」ジャック・デリダ+ベルナール・スティグレール
視線の権利
アーティファクチュアリティ、ホモヘゲモニー
記憶の証書――地政とテレテクノロジー
遺産相続とリズム
「文化例外」――国家の状態、出来事
アーカイヴ市場――真理、証言、証拠
フォノグラフィー:意味――遺産相続から地平へ
幽霊的な記録(分光写真[spectorographie])
無意識の警戒
第三部
「離散的イマージュ」ベルナール・スティグレール
【付箋箇所】
10, 26, 32, 43, 69, 74, 80, 87, 91, 95, 133,135, 140, 159, 179, 205, 207, 210, 219, 241, 257, 258, 260
ジャック・デリダ
1930 - 2004
ベルナール・スティグレール
1952 - 2020