読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

高橋睦郎 句集『荒童鈔』(1977)歌集『道饗』(1978)

ともに現代詩文庫『続・高橋睦郎詩集』に収録されている。

『百人一句』を読んで、著者本人の作品はどのようなものだろうと『荒童鈔』を期待しながら読んだのだが、あまりピンとこない。俳句素人には味わい方がよくわからない作品が多いのだろうと思う。
それでも

陽炎や昔をとこがみちのおく

は幻影を見ているのだなと感じ

湯豆腐の端ふるへつつ煮られけり

ではいっしょに心がふるえているのだなと想像することはかろうじてできた。

歌集のほうはもう少し気楽に好みを言えそう。

始原(はじめ)に言地(ことば)をさすらへてさすらひの果てに失せしより哥おこりけむ
復活の赤き卵は籠(こ)に多(さわ)にわれにつながる一つだにありや
孩(みどりご)を焔(ほのほ)に翳(かざ)す女神への怖れを核(さね)としエレウシース縁起
ゆゑ冥き罪あがなふとおほなむちおほき帒を負ひてさすらふ

はじまりを畏怖しつつ歌いながら耐える姿勢は尊いけれども恐ろしさもともなっていると思う。

 

高橋睦郎
1937 -