読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

井筒俊彦『イスラーム文化 その根底にあるもの』(1981, 1991)

1981年春、国際文化教育交流財団主催の「石坂記念講演シリーズ」の三つの講演をあつめたもの。イスラームを理解しようとするならば、まず人権に対する神権という視点が必要になってくる。神が主人である世界。

講演1

イスラームという宗教は決して新しい宗教ではありませんでした。新興宗教ではなくて、むしろ古い宗教、永遠に古い宗教です。ユダヤ教キリスト教による歪みを全部もとに戻して、「アブラハムの宗教」を根源的、形而上的理念に最も近い純正な形で、つまり真にアブラハムな姿で、立て直そうとするもので、それはあったのです。(「Ⅰ 宗教」p55 太字は原文では傍点)

 講演2

イスラームは「神の国」と「地の国」の分離は絶対に認めません。前にも申しましたが、「神のものは神へ、カエサルのものはカエサルへ」というキリスト教的理念が全然通用しない世界なのです。(「Ⅱ 法と倫理」p144)

 講演3

イスラームにとって最も重要な預言者ムハンマドすら「市場を歩きまわり、ものを食う」ただの人間とするスンニー派に対立して、イマームと呼ばれる神的人間の存在を認め、それをすべての事の根底とするシーア派は、それだけキリスト教より近いと考えていいと思います。(「Ⅲ 内面への道」p209 太字は原文では傍点)

イスラーム文化の精神面をはっきりと伝えてくれる専門家のことば。40年近くたっても色褪せないことば。文化の違い、宗教の違いは正しく認識しておいた方がよく、そのためにも専門家の正しい研究が重要になってくる。

 

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井筒俊彦
1914 - 1993