読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

高橋源一郎『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』(2018)

高橋源一郎は昔から気になる作家だ。小説に関してはほぼ全部読んでいるんじゃないかと思う。で、久しぶりにいい高橋源一郎作品を読んだような気になった。三度目の離婚以降の作品(『あ・だ・る・と』)あたりから何となく低調な感じがしていたけれど、今回は雑多な感じと、地震にかかわる非日常感・非常時感が定着されていて、引き込まれた。制御できないものが作家の力技で押しこめられている感じ。

これは山田風太郎の作品をめぐってのことば。

通常なら、人間の死体と犬の死体が一緒に置かれてあるなら、まずは、分別しようとするだろう。分別されずに、放置されているのは、「非常時」だからである。
人間の死体が「焼鳥」みたいに並べておいてあるのも、同じ理由だ。「非常時」だから、放っておかれているのだ。
放置されたものは、そこに長く留まる。長く留まると、どうなるか。つい、見てしまうのである。人間というものは。(p312)

呆然としながらも、黙らずに、ことばを組み立てていく小説家の姿を見せていただいた気がした。

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高橋源一郎
1951 -