読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

仲正昌樹 「ハイデガー哲学入門 ― 『存在と時間』を読む」(2015)

新書のハイデガー入門書。『存在と時間』の要点が簡潔にまとめられていて助かる。また個別概念の解説が的確でしかもみずみずしい。

 

流行という現象について

ハイデガーは更に、「空談」が「好奇心 Neugier」と結び付いていることを指摘する。「好奇心」というのは、「配慮的気遣い」の一つの形態であるが、見られたものを理解しようとはしない、言い換えれば、「見られたものに関わる存在」に立ち入ろうとはしない。ただ見るためだけに、「気遣う」のである。そこに滞在することなく、新たなものかららたなものへと飛び移り、「気晴らし」しようとする。こうした「好奇心」が辿る途は、「空談」によって調整されるという。「空談」によって「ひと」が読み、見ておかねばならないものが語られるので、それに合わせて「好奇心」は、移動していく。(第二章 「ひと=世間」の何が問題なのか? p98)

  明解。

 

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目次:
はじめに──ハイデガーは何故重要なのか?
第一章 何故、「主体」ではなく、「現存在」と言うのか?
第二章 「ひと=世間」の何が問題なのか?
第三章 「死に向かう存在」にとっての「良心」とは?──「覚悟」するのは誰か?
第四章 「存在」と「時間」はどういう関係なのか?
終 章 『存在と時間』の残した課題
あとがき

仲正昌樹
1963 -
マルティン・ハイデガー
1889 - 1976