読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

エピクテトスの『語録 要録』(中公クラシックス 2011, 中央公論社『世界の名著13 キケロ/エピクテトス/マルクス・アウレリウス』1968 ) 清沢満之と読むエピクテトス

明治期真宗大谷派の突出した他力の宗教家たる清沢満之と、後期ストア派で奴隷出身という特異な出自を持つ哲学者「エピクテタス氏」との出会いに導かれて、エピクテトスの『語録 要録』を中央公論社『世界の名著』の抄訳で読んだ。新刊書店では中公クラシックス岩波文庫の國方栄二による新訳が購入可能。

仏が遍満する世界での有限と無限から、責任を持てる圏域と責任をもてない圏域、如意と不如意、自力と他力を説く宗教家清沢満之と、ギリシアの神々が統括する世界で意志的なものと意志外のもの、権内と権内でないものから責任を持てるもの責任を持てないものを切り分ける哲学者エピクテトスは、世界を二分して見る世界観で共通している。責任をもてないものについては悩む必要もないという割り切り方はいずれも軽くすがすがしい。

エピクテトスは、すべてのものを意志的なものと意志外(=外界)のものとに分ける。前者はわれわれの権内にあって自由になるが、後者はわれわれの権内になく、したがって自由にならない。われわれの左右しうるものには責任がるが、そうでないものには責任がない。だから彼は、外的なものには大胆であれといい、われわれの権内にあるものにたいしては慎重であれとか、さいしんであれというのである。(鹿野治助の解説文より)

エピクテトスの言葉自体も重くないのが魅力。少しずつ読み切れるところもよい。

ゆとりを持つことの、不可能でないことを考察し、探究するがいい。探究そのものはなんらきみを害するものではない。そして哲学するということは、だいたいにおいて、どうすれば妨げられずに欲したり、避けたりすることができるかということを探求することだ。(「語録」二 雑集 三・一四 )

ほんとにストア派かと思うくらいに閾の低い探究の勧め。しかも実用的、効果的。


エピクテトス
50ごろ - 135ごろ
鹿野治助(カノジスケ)
1901 - 1991

 

 

読書資料:

 

[中央公論社]

語録 要録|全集・その他|中央公論新社

 

[岩波書店 鹿野治助訳]

www.iwanami.co.jp

www.iwanami.co.jp

 

[岩波書店  國方栄二訳](全訳)

www.iwanami.co.jp


『語 録』

冒頭の挨拶状

第一巻
 第一章 われわれの力の及ぶものとわれわれの力の及ばないもの
 第二章 どのようにして人はあらゆる場合に人格にかなったことを保持することができるのか
 第三章 神が人間の父であるということから、どのようなことが結果するのか
 第四章 進歩について
 第五章 アカデメイア派に対して
 第六章 摂理について
 第七章 転換論法、仮定論法、および同類のものの使用について
 第八章 能力は教育のない者には安全でないこと
 第九章 われわれが神と同族であることから、人はどのような結論に到達するのか
 第一〇章 ローマで立身出世のために忙しかった人びとへ
 第一一章 愛情について
 第一二章 心の満足について
 第一三章 どうすれば神々に気に入られるようにそれぞれの行動ができるのか
 第一四章 神々はすべての人間を見守っていること
 第一五章 哲学は何を約束するのか
 第一六章 摂理について
 第一七章 論理学が必要なものであること
 第一八章 間違っている人に腹を立てるべきでないこと
 第一九章 僭主に対してはいかなる態度をとるべきか
 第二〇章 理性はいかにして自分自身を考察するのかについて
 第二一章 驚嘆されることを好む人たちに対して
 第二二章 先取観念について
 第二三章 エピクロスに対して
 第二四章 困難な状況に対してどのように挑むべきか
 第二五章 同じ問題について
 第二六章 生きるための法則は何か
 第二七章 どれだけの種類の心像が生じ、これに対してさしあたってどんな救助法をとるべきか
 第二八章 人びとに対して怒るべきではないこと、そして、人びとの間では何が小事で何が大事か
 第二九章 不屈の精神について
 第三〇章 困難な状況にいかに対処すべきか

第二巻
 第一章 大胆であることと用心することは矛盾しないこと
 第二章 心の平静について
 第三章 哲学者を推薦する人びとに対して
 第四章 かつて姦通罪で捕まったことのある人に対して
 第五章 いかにして高邁な心と細心さは両立するか
 第六章 善悪と無関係なこと
 第七章 どのように占うべきか
 第八章 善の本質について
 第九章 われわれは人間の務つとめをはたすことができないのに、哲学者の務めを引き受けていること
 第一〇章 いかにしていろいろな呼称から義務を見出すことができるか
 第一一章 哲学の始めは何であるか
 第一二章 問答することについて
 第一三章 不安を抱くことについて
 第一四章 ナソに対して
 第一五章 決めたことを頑固に守り通そうとする人びとに対して
 第一六章 われわれは善悪に関する教説を実行する練習をしていないこと
 第一七章 どのように先取観念を個々の場合に適合させるべきか
 第一八章 いかにして心像と戦うべきか
 第一九章 哲学者たちの教説をただ言葉だけで取り上げる人びとに対して
 第二〇章 エピクロス派とアカデメイア派に対して
 第二一章 首尾一貫しないことについて
 第二二章 友愛について
 第二三章 語る能力について
 第二四章 エピクテトスに評価してもらえなかった人に対して
 第二五章 論理学はどうして必要か
 第二六章 過失に固有なことは何か

訳 注
解説 エピクテトスの生涯と著作

 

www.iwanami.co.jp

第三巻
 第一章 おしゃれについて
 第二章 進歩しようとする人は何について訓練しなければならないか、および、われわれは最も大事なことをおろそかにしていること
 第三章 優れた人の対象となるものは何であり、とりわけ何を目的として訓練せねばならないのか
 第四章 劇場で見苦しいほど逆上(のぼ)せあがった人に対して
 第五章 病気のために学校を去る人に対して
 第六章 雑 録
 第七章 エピクロス派であった自由人都市の総督に対して
 第八章 心像に対してはどのように訓練をするのか
 第九章 裁判のためにローマへ行こうとするある弁論家に対して
 第一〇章 どのように病気に耐えるべきか
 第一一章 雑 録
 第一二章 訓練について
 第一三章 孤独とは何か、どのような人が孤独なのか
 第一四章 雑 録
 第一五章 なにごとも慎重におこなうべきこと
 第一六章 交際は慎重にせねばならないこと
 第一七章 摂理について
 第一八章 知らせによって混乱してはならないこと
 第一九章 一般の人の態度と哲学者の態度はどのようなものか
 第二〇章 すべての外的なものから利益を得ることができること
 第二一章 軽率に哲学の講義を始めようとする人びとに対して
 第二二章 キュニコス派の思想について
 第二三章 演示するために読書したり議論したりする人びとに対して
 第二四章 われわれの力が及ばないものに執着してはならないことについて
 第二五章 計画したことを達成できなかった人びとに対して
 第二六章 困窮を恐れる人びとに対して

第四巻
 第一章 自由について
 第二章 交際について
 第三章 何と何を交換すべきか
 第四章 平静に暮らすことに熱心になっている人びとに対して
 第五章 けんか好きで野獣のような性格の人たちに対して
 第六章 同情されることを苦にする人びとに対してs
 第七章 恐れを抱かないことについて
 第八章 急いで哲学者の体裁をよそおう人びとに対して
 第九章 心変わりして恥知らずになった人びとに対して
 第一〇章 何を軽蔑すべきか、何において優れているべきか
 第一一章 清潔について
 第一二章 注意することについて
 第一三章 自分のことを軽々しく話す人びとに対して
 
断 片

『要 録』

訳 注
解説 エピクテトスの思想
参考文献
索引(人名/事項)