読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

山田克哉『時空のカラクリ 時間と空間はなぜ「一体不可分」なのか』(講談社ブルーバックス 2017)

一般相対性理論の入門解説書。類書よりも丁寧にかみ砕いた解説書になっていると思うのだが、やっぱり素人には何となくしか理解できない。重力によって時空はゆがむ。重力が強いところでは時空がゆがんでいるので、地球のような重力が弱いところから観測した場合は、そこでの時間の進み方は遅くなっている。重力崩壊したブラックホールでは時間がストップしている。ここまでは本文のなかに書いてあることで、これは言葉を変えれば、宇宙の時空にはむらがあり、重力が高いところでは宇宙の誕生からあまり時間が進んでいない空間が存在するということになる、と思うのだがあっているだろうか?(自問) 地球上からの観測で宇宙の誕生は138億年前、観測者は存在できないだろうけれどブラックホールの境界面から内側は宇宙の誕生から時間の経過がより少ない時空になっているのだろう、多分、と思いつつ、また別の本で疑問が解けたらいいかなと本書を読み終える。

巨星から出た光を遠く離れた地球で観測すると、巨星では光の波がゆっくり振動していると観測されます。繰り返しますが、これは時間がゆっくり経過するのと同じことです。重力場の強い空間では、重力場の弱い空間に比べて時間が遅く進むのです。もちろんこれは、比較の問題です。比較の問題であるとは、すなわち相対的であるということで、巨星での時間は地球での時間と比較して相対的に遅れているのです。
(中略)
宇宙規模から見ると、地球の重力(地球がその周囲の空間に作り出す重力場)はきわめて小さく、ゼロに近いといっても過言ではありません。その重力の弱い地球から、このブラックホールのシュワルツシルト地平面が見えるとしましょう。シュワルツシルトの地平面では、重力が地球のそれよりも桁外れに強いので、地球から観測するとシュワルツシルトの地平面では時間がストップしています(時間が経過していない)。
しかし、これもまた「相対的な問題」です。シュワルツシルトの地平面上を(あるいはその際スレスレに)”旅行”している宇宙船内の人にとっては、時間は通常どおりに経過していますし、光速度も秒速30万㎞で変わりません。
(第2章 「重力は時間を支配する――重力と時間のふしぎな関係」p108-111 太字は実際は傍点)

著者は一般相対性理論の「相対性」の部分を何度も読者に喚起しているので、そこは忘れないようにしておこうと思う。
それから、一般相対性理論について理解するためには「リーマン幾何学」と「4次元時空の計量テンソル」が必要ということも教えてくれていて、まあ、私自身は計算自体の理解はこの先もできないだろうが自然言語に翻訳されて解説されている部分については受け入れる準備が出来るように協力していただいたと思っている。

他には、インフレーション時代の宇宙の膨張と原子重力波という話も大変興味深い。

 

目次:
第1章  「時空」の誕生――空間と時間は なぜ一体不可分なのか?
第2章  重力は時間を支配する――重力と時間のふしぎな関係
第3章  重力が重力を消す!?
第4章  重力の正体――それは「時空のゆがみ」だった
第5章  4次元時空とアインシュタインの方程式
第6章  ゆがむ時空の歩き方――測地線とは何か
第7章 宇宙誕生直後の「時空のゆらめき」――138億年前の「原始重力波」とは何か

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山田克哉
1940 -