読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

竹内薫『「ファインマン物理学」を読む 量子力学と相対性理論を中心として』(講談社ブルーバックス 2019)

量子力学が簡単に理解できない理由は「量子力学複素数の世界の力学」(p169)だから、ということを繰り返し論じてくれたところに、本書のいちばんの価値があるのではないかと思った。

 

量子力学の要―確率振幅について、『ファインマン物理学』第5巻からの引用】

量子力学における第1番目の一般原理は、粒子が源sを出てxに到達する確率が、確率振幅――いまの場合”sを出た粒子がxに到達する振幅”――とよばれる複素数の絶対値の2乗によって定量的に表わされるということである。
(5巻 3-1 37ページ、 第1章「いきなり? 第5巻「量子力学」を読んでみる」p57)

 

量子力学複素数の世界についての竹内薫の解説】

われわれが測定することができるのは、確率だけなのだ。確率は、0.3(=30%)とか0.01(=1%)というような実数の値をとる。これは測ることができる。
ところが、確率振幅Øのほうは、複素数なので、直接観測することができないのである!
(中略)
この「直接観測できない複素数Øの世界」が「直接観測できる実数Pの世界」の背後に隠れている。
そして、この奇妙な複素数Øが電子を記述しているために、電子は自分ひとりで干渉を起こしてしまうのだ。
複素数Øは、波の高さに相当する。

( 第1章「いきなり? 第5巻「量子力学」を読んでみる」p44-46)

 

複素数の世界に慣れ、位相という考え方に馴染むことが、量子力学相対性理論を理解していくには必要なようだということは伝わった。でも、経験世界とは異なった世界だから、やっぱり入門解説書であってもけっこう難しく感じた一冊だった。『力学と熱力学』のときと違って、だいぶ理系頭が必要。


目次:

第1章 いきなり? 第5巻「量子力学」を読んでみる
第2章 量子力学のミステリー
第3章 ファインマン流の相対性理論
第4章 シュレディンガー方程式の登場
第5章 ファインマン経路積分とは何か

 

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竹内薫
1960 -
リチャード・フィリップス・ファインマン
1918 - 1988