読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

CD付き絵本『けろけろ ころろ Kerokero Kororo - A Summer Festival at Frogs-Pond』(絵:富山妙子 文・音楽:高橋悠治 福音館書店 2004 )

ピアノ奏者としての高橋悠治のCDよりはお目にかかることの少ない作曲家としての高橋悠治の自演ピアノ曲が付いた絵本。長年にわたり共同制作を行ってきた画家富山妙子との共作絵本でもある。
政治色が強い一般層向けの作品とは違い、読み聞かせ対象年齢が3才以上、小学校初級から自分で見て読める、それほどくせのない作品。誰もいない静かな池にどこからか落ちてきた車のタイヤの上で祭りを開いた蛙たちの話。絵のテイストはどことなくレオ・レオーニっぽい。
一通り絵を見て本文も読んだ後に、どんな音楽があわせてあるのかと興味を持ってCDを聞いてみると、これが子供への忖度なしの真っ向勝負の現代音楽。しかも私が聞いた感じだと、音色がすこしも蛙っぽくなし、祭りの昂揚した祝祭感もない。高音硬質の粒だった音の展開は、どちらかというと金属質で、発光しながら跳ねるように飛びまわる、虫たちの終わりも疲れもない無機質な乱舞に合いそうだ。幼児や小学生がこのCDを聴きながらこの絵本を読んだらどんな感想をもつのだろうかと興味はあるが、いまは確かめるすべがない。残念。、
CDには「しずかな いけ」「きょうりゅうのたまご」「ゆうだち」「おまつり」「よあけ」の5曲、約10分の楽曲が収められていて、テレワークの際のBGMとしてエンドレスで流していると、とくに今日のような雨降りの日などは、ひそやかで冷え冷えとした運動感と鎮静感の繰り返しが、マイペースのデスクワークにしっくり馴染む。


富山妙子
1921 - 2021
高橋悠治
1938 -