ひろさちやの魅力は、自分が何度も仏典を読み込んで掴んだこれぞというものを、通念を超えたところで開示してくれるところにある。三桁にもなる全著作のうちのほんの数冊を読んだけではあるが、いままで読んだものにはすべて生き生きとしていて芯の通った独自の解釈が説かれている。
本書もそう。
例えば、
「悪人正機説」は法然の教えを引き継いだものであり、親鸞独自の思想は極楽世界と娑婆世界を往還するという「二種廻向説」の世界観にこそある
また
親鸞の妻は、親鸞の生涯の流罪と移住の跡をたどると、玉日姫と恵信尼と今御前の母の三人であると考えられる
あるいは
仏教の「出世間主義」というのは、火宅である世間では消火活動などせずに逃げ出すことをすすめる教えだ
など。
はじめて聞けば、みな身構えるような荒々しさをもった教えである。ただ、ひろさちやの言葉を素直に読めば、意図して波風を立てようとしているわけではないことは分かる。あくまでひろさちやが掴んだ正しい仏教の見方として、衒いなく語られているだけで、その風通しの良さがちょっと稀なので、身震いが走るようなことも時におこるということなのである。
【付箋箇所】
32, 35, 47, 114, 122, 142, 202, 208
目次:
まえがき
第1章 善人と悪人
第2章 親鸞と法然
第3章 僧にあらず、俗にあらず
第4章 親鸞の他力の思想
第5章 京に帰った親鸞
第6章 晩年の親鸞
親鸞略年譜
法然
1133 - 1212
親鸞
1173 - 12663
ひろさちや
1930 - 2022