読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯 リベラル・ユートピアの可能性』(原著 1989, 岩波書店 2000)

真理は発見されるものではなく言語のメタファー機能によって作り出されていくものであるという、ローティのロマン主義的思想を展開した代表作。20世紀の分析哲学と大陸哲学双方に目配せが利いていることによって、逆にアカデミックな印象をあまり感じさせない特異な書物。扱っている題材やスタイルの印象からいうと哲学書というよりも文芸批評に近い。ニーチェハイデガー、後期ヴィトゲンシュタイン、デイヴィッドソン、デリダなどとともにハロルド・ブルームなどがよく引用されていたり、注の中ではあるがポール・ド・マンについて否定的に言及していたりするところが目を惹く。後半は、プルーストナボコフジョージ・オーウェルの小説を扱っているので、先に各小説世界にある程度親しんでおいた方が無難。

 

 

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【付箋箇所】
5, 20, 25, 40, 54, 57, 73, 76, 85, 91, 97, 101, 103, 113, 119, 121, 135, 136, 140, 180, 183, 191,222, 308, 332, 368, 410, 419, 422

目次:
第1部 偶然性
 第一章 言語の偶然性
 第二章 自己の偶然性
 第三章 リベラルな共同体の偶然性
第2部 アイロニズムと理論
 第四章 私的なアイロニーとリベラルな希望
 第五章 自己創造と自己を超えたものへのつながり――プルーストニーチェハイデガー
 第六章 アイロニストの理論から私的な引喩へ――デリダ
第3部 残酷さと連帯
 第七章 カスビームの床屋――残酷さを論じるナボコフ
 第八章 ヨーロッパ最後の知識人――残酷さを論じるオーウェル
 第九章 連帯
 
リチャード・ローティ
1931 - 2007