読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『堀河院百首和歌』(1105年頃成立 明治書院和歌文学大系15 2002)

はじめての大規模な組題百首和歌の集成で、後の世の百首詠の規範とされ、思ってもみないような文化的拘束力も生じるまでになった歴史的な業績。たとえば和歌に詠まれる千鳥が冬の景物として定着するようになったのは堀河百首で冬の題に入れられたことによるもので、それまで千鳥が冬の鳥として意識して詠まれるようなことはなかったという。
成立時期は1105年から1106年にかけてのあいだで、藤原通俊撰の第四勅撰和歌集『後拾遺和歌集』(1086年)と源俊頼撰の第五勅撰和歌集金葉和歌集』(1126年)を繋ぐような位置にある。

詠者16人、1600百首の詞華集で、ひとつの題に16人16首が並んでいるところが特徴。目が覚めるような歌が並んでいるというわけではないが、それぞれの歌人の味わいが順番に繰り返されるリズムは、悪いものではない。

題は以下百。

【春】
立春・子日・霞・鶯・若菜・残雪・梅・柳・早蕨.桜.春雨・春駒・帰雁・呼子鳥・苗代・菫菜・杜若.藤.欸冬・三月尽
【夏】
更衣・卯花・葵・郭公・菖蒲・早苗・照射・五月雨・盧橘・螢・蚊遣火・蓮・氷室・泉・荒和秡
【秋】
立秋・七夕・荻・女郎花・薄・苅宣・蘭・萩・雁・鹿・露・霧・槿・駒迎・月・擣衣・虫・菊・紅葉・九月尽
【冬】
初冬・時雨・霜・霰・雪・寒蘆・千鳥・凍・水鳥・網代・神楽・鷹狩・炭竃・埋火・除夜
【恋】
初恋・不被知人恋・不逢恋・初遇恋・後朝恋・過不逢恋・旅恋・思・片思・恨
【雑】
暁・松・竹・苔・鶴・山・河・野・関・橋・海路・旅・別・山家・田家・懐旧・夢・無常・述懐・祝詞

詠者は掲載順で以下16名。

藤原公実
大江匡房
源国信
源師頼
藤原顕季
藤原顕仲
藤原仲実
源俊頼
源師時
源顕仲
藤原基俊
永縁
隆源
肥後
紀伊
河内

題が与えられて、皆それなりの歌を出してきているのだから、歌人を名乗る人たちはやはり大したものなのだ。

照射(ともし)、国信歌:
雲間なき五月の山の木(こ)の下はともしするにぞ星と見えける

七夕、顕仲歌:
彦星の天(あま)の岩船船出してこよひや磯に磯枕する

鷹狩、顕季歌:
白塗(しらぬり)の鈴もゆらゝに磐勢野に合せてぞ見る真白斑(ましらふ)の鷹

 

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【付箋歌】
7, 56, 157, 347, 419, 466, 473, 586, 678, 752, 799, 823, 965, 979, 1040, 1061, 1082, 1261, 1472, 1493, 1577,