アガンベンの方法序説という趣きの著作。フーコーに倣いながら「パラダイム」「しるし」「考古学(アルケーの学)」に言及し、思考の基盤をかたちづくる骨組みを浮き上がらせようとしている。印象的なのは、記号をはみ出る過剰としてのしるしが、傷のようなものであり受動的かつ実践の中で事物を認識可能にするものであるというところ。記号学と解釈学の断絶に橋をかけるのがしるしであり、いかにして記号が言説に移行変形するかを説明するための起点にあるものであるというところ。
むしろ存在とその受動は同一のものである。現実存在とは、受動における、すなわちしるしにおける超越論的な散種なのである。したがってしるしは(言語にたいする言表のように)、純粋な現実存在のレヴェルで事物をしるしづけるもののことである。
(第2章「しるしの理論」)
しかし、このアガンベンの著作は、多くの先行者に言及しながら圧縮された表現で記述されているので、かなり難解。大切なことが書かれているのはあるていど感知できはするのだが、ゆっくり読む範囲をひろげ自分のなかの足りない知識を補強しながら読み返していかないと、すぐに忘れ去ってしまう危険もかなり高い。訳者二人による熱のこもった解説で、だいぶ理解を助けてもらえるものの、難物であることに変わりはない。他人の方法を知るというのは、なかなか大変なことだ。
【付箋箇所】
10, 38, 76, 79, 96, 102, 104, 107, 109, 113, 122, 125, 140, 156, 162, 169, 183, 184, 187, 195, 197
目次:
第1章 パラダイムとはなにか
第2章 しるしの理論
第3章 哲学的考古学
新たなる方法序説―訳者あとがきにかえて(岡田温司)
パラダイムの倫理としるしの法―文庫版解題として(岡本源太)
ジョルジョ・アガンベン
1942 -
岡田温司
1954 -
岡本源太
1981 -