『善信聖人親鸞伝絵』は親鸞の曽孫にあたる覚如が、親鸞没後33年の1295年に自ら詞書を染筆し完成させた伝記絵巻。絵師は不明だが、絵からはしっかりした技量が伝わってくる。寺社の室内での場面が多く、比較的動きの少ない絵巻だが、描かれている人物は概して大きく、表情や衣装なども個々人の特徴がわかるように描きわけられていて、リアリティが高い。
親鸞の教えの特質である他力信心と専修念仏については、絵からよりも詞書の場面解説から知るところが多い。他力の信心により不退の位を得ると信じる信不退と、自ら念仏の行を積むことで不退の位に至ると信じる行不退、どちらの座に着くかと師法然もいるなかで門弟に問いかける場面の詞書は特に印象的である。カタカナルビ付きの詞書の書体も、書に通じていない者であってもなんとなく美しいと感じるような姿をしている。