読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

日本パウル・クレー協会編『クレー ART BOX ー線と色彩ー』(講談社 2006)

スイスの首都ベルンに2005年にオープンした「パウル・クレー・センター」の開館記念のコンパクトな画集。

版型はA24取で140×148mm。

収録作品は138点で、全部がカラー図版(デッサンはもともと白黒だがカラー写真による掲載)。

孫でパウル・クレー財団の会長、「パウル・クレー・センター」創設の立役者でもあり、自身も画家であったアレクサンダー・クレーのパウル・クレー評と、パウル・クレー本人が残した文章を中心に、クレーから大きなインスパイアを受けた芸術家たちの言葉(おもに日本人)が並んでいるところに特徴がある。

澁澤龍彦吉行淳之介ピエール・ブーレーズ瀧口修造谷川俊太郎・・・

山口至剛デザイン室によるDTPで、引用された言葉や詩に、より強い生気・表現力が付け加えられていることにも注目したい。

「物質のくびきからときはなれた、純粋な精神の表象である線を用いて描く」というクレーの日記の言葉を、活字の配置と配色という物質的側面から摸倣し強化しているような様子がグッとくる・


収録作品としては前期のデッサンと水彩画が多いこと、病を得た晩年の線に特化した作品が多いことも特徴的。

書物としてのサイズ感がハンディであるためとても親しみやすくはあるのだが、選ばれた作品のひとつひとつに立ち止まってみると、クレーの底知れない魅力に惹き込まれていく静けさが充溢していて、見るものの心は逆に探索をはじめずにはいられないざわめきにおおわれていってしまう。

 

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