読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ヤーコプ・ベーメ『アウローラ 明け初める東天の紅 (ドイツ神秘主義叢書8)』(原著 1612, 薗田坦訳 創文社 2000)

ルターのドイツ語訳聖書を読み、青年期にエゼキエル書に描かれた幻視体験に類似した数分間の幻視神秘体験を持ったところから、独自に神学的研鑽を積み、靴職人から神秘的著述家となっていったヤーコプ・ベーメの37歳の時のはじめての著作。専門的に神学や哲学を学んだわけではないこともあって、神学書というよりも詩作品、『楽園喪失』や『楽園回復』を書いた詩人のジョン・ミルトンに近い文芸譚として読んだ方がしっくりくる。創造に関わる悪の要素などベーメから大きな影響を受けたと思われるウィリアム・ブレイクのいくつかの預言書よりも内容は整っていて、聖書の独自解釈に沿った創世譚を含むベーメの世界像はるかに読みやすい。

内容については目次からも匂い立つような神秘性が感じ取れるだろう。全26章、本篇は400ページを超える大作だが、読み通すだけなら比較的すんなり読める。世界観をどれだけ理解し、どれだけ共感するか、あるいはどれだけ反発するかは、読み手それぞれの資質によると思う。

【目次】
序 言 本書について好意ある読者に寄せる著者の序言
第01章 自然における神的本質の探究について
第02章 いかに神と自然の本質は考察されるべきかについての指針
第03章 きわめて祝福され、勝利に充ちた、聖にして聖なる三重性、父、子、聖霊なる神、そして唯一なる神について
第04章 聖なる天使の創造について。一つの指針あるいは開かれた天上の門
第05章 天使の体的実体、本質および固有性について
第06章 いかに天使と人間は、神の似姿および像であるか
第07章 天使の外延、場所、居住および統轄について。創造ののち、それらは始めにいかに成立し、またいかにしてそのようになったか
 36
第08章 天使の王国のまったき体について。大いなる秘義
第09章 優雅にして親愛なる、また慈愛深き神の愛について
第10章 神的な力における第六の根源=霊について
第11章 神的な力における第七の根源=霊について
第12章 聖天使の誕生と到来、および統轄、秩序、そして天上の歓喜の生について
第13章 ルチフェルの王国の、恐るべき、嘆かわしい、悲惨な堕落について
第14章 いかにして天上の最も美しい天使ルチフェルが最も忌まわしい悪魔になったか
第15章 ルチフェルにおける罪の始源の、第三の相あるいは形姿について
第16章 ルチフェルとその天使たちにおける罪の始源の、第七の相あるいは形姿について
第17章 潰敗せる自然の嘆かわしい惨めな状態、そして聖なる神の統治に代わる四元素の起源について
第18章 天と地、そして第一日の創造について
第19章 創造された天、地と水の形姿、そして光と闇について
第20章 第二日について
第21章 第三日について
第22章 星々の誕生と第四日の創造について
第23章 地の上方の深みについて
第24章 星々の合=体化について
第25章 星々の誕生の全身体すなわち全占星学、あるいはこの世界の全身体について
第26章 土星について
著者の結語。書簡10.38
訳注
後記
用語索引


なお、日本語版wikiのヤーコプ・ベーメの項目はかなり熱の入ったもので読み応えがある。ベーメ入門としてはまずこちらを一読してみるのがよいだろう。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

 

【付箋箇所(段落番号)】
序 言 本書について好意ある読者に寄せる著者の序言
 78, 87, 97
第01章 自然における神的本質の探究について
 2, 15
第02章 いかに神と自然の本質は考察されるべきかについての指針
 5,
第03章 きわめて祝福され、勝利に充ちた、聖にして聖なる三重性、父、子、聖霊なる神、そして唯一なる神について
 10, 46
第04章 聖なる天使の創造について。一つの指針あるいは開かれた天上の門
 21, 
第05章 天使の体的実体、本質および固有性について
 35
第06章 いかに天使と人間は、神の似姿および像であるか
 16
第07章 天使の外延、場所、居住および統轄について。創造ののち、それらは始めにいかに成立し、またいかにしてそのようになったか
 36
第08章 天使の王国のまったき体について。大いなる秘義
 7
第09章 優雅にして親愛なる、また慈愛深き神の愛について
 43
第10章 神的な力における第六の根源=霊について
 2, 23
第11章 神的な力における第七の根源=霊について
 67
第12章 聖天使の誕生と到来、および統轄、秩序、そして天上の歓喜の生について
 8, 128
第13章 ルチフェルの王国の、恐るべき、嘆かわしい、悲惨な堕落について
 117
第14章 いかにして天上の最も美しい天使ルチフェルが最も忌まわしい悪魔になったか
 18
第15章 ルチフェルにおける罪の始源の、第三の相あるいは形姿について
 70
第16章 ルチフェルとその天使たちにおける罪の始源の、第七の相あるいは形姿について
 62
第17章 潰敗せる自然の嘆かわしい惨めな状態、そして聖なる神の統治に代わる四元素の起源について
 13
第18章 天と地、そして第一日の創造について
 28, 114
第19章 創造された天、地と水の形姿、そして光と闇について
 28, 56, 107
第20章 第二日について
 11, 24, 37, 56, 67, 81, 
第21章 第三日について
 72, 103
第22章 星々の誕生と第四日の創造について
 70
第23章 地の上方の深みについて
 6, 46, 71, 90, 97
第24章 星々の合=体化について
 20, 34, 67, 
第25章 星々の誕生の全身体すなわち全占星学、あるいはこの世界の全身体について
 61
第26章 土星について
 13, 125, 127, 
著者の結語。書簡10.38
訳注
後記
用語索引


ヤーコプ・ベーメ
1575 - 1624
薗田坦
1936 - 2016