仮面をつけると仮面の人格が憑依する。そのような憑依体質をもった人が詩人たるには相応しいのであろう。
なにものかになりかわって歌う。なにものかをよびよせて歌う。わたしとなにものかが二重写しとなってことばを発する。エズラ・パウンドの処女詩集『消えた微光』に収められた詩篇には、そういった感触の作品が多い。
地上の冬が来た。
わたしは万象の一部で、
万象の精神がわたしの中で動くからには
わたしは地上の冬を耐えねばならない。
(「インバーン(冬)」より)
巻末に付けられた訳者岩原康夫のエズラ・パウンド論「パウンドの工房」はパウンド自身の詩作に関する相貌をよく描き出しているとともに、ジョイスやT・S・エリオットを筆頭にパウンドが見出し世に送り出した多くの詩人たちとの関わりを活写していて、パウンドを理解するための優れた導きとなっている。
【付箋箇所】
171, 184, 188, 191, 199, 204, 212
エズラ・パウンド
1885 - 1972
小野正和
1937 -
岩原康夫
1940 -