読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジャン・ラクロワ『カント哲学』(原著 1966 木田元+渡辺昭造訳 白水社 文庫クセジュ 2001)

1971年から2001年の三十年間で22刷りされている本書はカント入門書のなかでも名著の部類に入るのであろう。新書版150ページに三大批判書と遺稿、『単なる理性の限界内における宗教』『プロレゴーメナ』『道徳形而上学言論』など主要著作を幅広く取り上げ、カント哲学の目指したところを明快に語ってくれている。

カントとヘーゲル、カントとヒューム、カントとプラトン、カントとアリストテレス、カントとライプニッツ、カントとストア哲学、カントとハイデガー、カントとデカルト、カントとフィヒテ、カントとベルグソン、カントとスピノザ、カントとシラー、カントとルソー、カントとニュートン、カントとフロイトなど、先行する哲学者と後続の哲学者たちとの類似と相異を多角的にとらえながら、カントの思想の特徴をくっきりと描き出そうとしている著者の狙いは、かなりの成果を上げていると感じさせる。なかでも数か所にわたって比較対象とされるスピノザの哲学とのコントラストは印象的である。

ある意味で、スピノザが神に語らせるのだとするなら、カントは人間に語らせる。だからこそ、存在の哲学に代えるに、自由の哲学をもってするのである。

神の無限からではなく、限界を持った人間の観点からなされる限界の哲学がカント哲学の特徴であるとまとめられている。

【目次】
序 論
第1章 形而上学的志向
第2章 認識と思惟
第3章 自然と自由
  1 美学
  2 倫理学
  3 歴史哲学
結 論

【付箋箇所】
17, 22, 23, 29, 30, 37, 38, 39, 41, 45, 48, 50, 55, 57, 60, 61, 66, 68, 75, 78, 85, 87, 91, 92, 96, 100, 103, 106, 108, 112, 114, 117, 120, 122, 124, 126, 136, 141, 145