読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョルジョ・アガンベン『カルマン 行為と罪過と身振りについて』(原著 2017, 訳:上村忠男 みすず書房 2022)

哲学とキリスト教神学に加えインドのタントラ仏教の教えから人間における自由について考察した論考。働かないこと、遊ぶこと、踊ることによって現世にニルヴァーナ(涅槃)が出来することを説いている。西洋においても東洋においても秘儀に属するようなことを世俗的かつ広範に常態化せしめ新たな共同体を招来せしめようとするアガンベンの願いが感じ取れる作品。

アートマンは踊り手であり、その行為はあくまでも身振りにすぎない。プラクシス――人間の生――は裁判(アクティオ―)ではなく、むしろ、身振りと言葉からなる、演劇的な意味におけるミュステ―リオン(mysterion)=秘儀である。
(第四章「行為を超えて」より)

政治を語る時にも芸術的な無為の力と輝きに眼を配り、芸術を語る際にも政治性をつねに忘れないアガンベンの姿勢が本書でも貫かれている。

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【目次】
1 カウサとクルパ
2 クリーメンとカルマン
3 意志のアポリア
4 行為を超えて

【付箋箇所】
29, 33, 52, 68, 88, 92, 95, 98, 100, 112, 116, 130, 132, 140, 142, 143, 147, 153


ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

ja.wikipedia.org

上村忠男
1941 - 

ja.wikipedia.org