レンブラントはその画業全般にわたって新約旧約の聖書のエピソードを取り上げて自身の作品をつくりあげてきた。ただ、その作品の構成は聖書の記述に厳密に従ったものではなく、レンブラントが聖書と聖書をもとにした先行作品に取材して、独自に形づくりあげていった臨場感あふれるリアリズム的な世界観であった。レンブラントならではの聖書の世界。この作品世界を本書の著者海津忠雄は「レンブラントの聖書」と呼んで、いくつかの角度から跡づけてゆく。目を見張るような記述はないが、レンブラントの志向性が正しく示された著作ではあると思う。
レンブラントには聖書の挿絵を描くという意図はまったくない。彼は聖書の真意を表現しようとしたのである。聖書の真意を表現するためには、聖書の記述から逸脱しても意に介さないのである。そういうものをわれわれは「レンブラントの聖書」と呼ぶ。
(Ⅱ.旧約聖書と新約聖書「放蕩息子の話」より)
なお、参考として掲載されている図版は鮮明ではあるが小さなモノクロームの図版なので、何らかの画集を参照したり想起したりしながら読める状況にあったほうがよい。
【目次】
Ⅰ 序章
レンブラントと聖書
Ⅱ 旧約聖書と新約聖書
アブラハムの話
ヤコブのヨセフの話
預言者の話
ヴェロニカの話
死者の復活の話
放蕩息子の話
Ⅲ レンブラントの思想
ファウストの話
聖ヒエロニムスの話
レンブラント略年譜
【付箋箇所】
10, 18, 24, 36, 37, 51, 89, 100, 110, 118, 122, 160, 170,
レンブラント・ファン・レイン
1606 - 1669
海津忠雄
1930 - 2009