読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

サルトル×レヴィ『いまこそ、希望を』(原著 1980, 1991 訳:海老坂武 光文社古典新訳文庫 2019)

希望が見いだせたらいいなぁと思って手に取った著作。

サルトル最晩年の言葉。

対談相手のベニ・レヴィは毛派のプロレタリア左派指導者で、1973年に68歳で盲目となったサルトルの秘書として1974年から思考の相手をつとめた人物。

本対談はレヴィ主導で、サルトルの生涯を批判的に問い詰めていくところを、サルトルが愚直に折れることなく回答していくという体裁のもの。

愛なき批判者とも言えるようなレヴィの態度に対して、自己批判を促されているところには避けずに向き合い、そこからさらに自由と友愛による倫理的な人間の営みに希望を見出そうとしている姿勢には頭が下がる思いがした。
※発想的にはカントの『判断力批判』の終結部に近い感じを持った。

身体的には大変な状況であり、思考する環境としても厳しすぎる状況にありながら、なおかつ人間に対する希望を捨てていないサルトルという人間がいたこと自体が、いまでも小さな希望として消えていないのではないかと思えた一冊。

 

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【付箋箇所】
12, 22, 26, 47, 55, 72, 74, 77, 88, 118, 140, 155, 159

ジャン・ポール・サルトル
1905 - 1980

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ベニ・レヴィ
1945 - 2003

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海老坂武
1934 - 

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