『存在と時間』刊行以前に書かれた数少ないハイデガーの論考「ナトルプ報告」の邦訳単行本。
同時期の講義録とは趣が異なり、アリストテレスの著作に基づいて自説を展開しているところに読者としては多少の捉えやすさがある。
世界と己への配慮のなかでの精神的エネルギーの効率的使用と本来的な使用の相反する傾向性について、圧縮されたかたちではあるが比較的感得しやすいかたちで論述されているのは、大学の教授職をめぐっての判断材料として求められたテキストの性格によるためであろう。
『存在と時間』を読むための補助テキストしては、一派的レベルの注釈者たちの著作よりも得られるものは多いと思う。
【目次】
アリストテレスの現象学的解釈
序にかえて
解釈学的状況の提示
『ニコマコス倫理学』第六巻
『形而上学』第一巻の第一章と第二章
『自然学』第一巻から第五巻
第二部について、『形而上学』第七巻、第八巻、第九巻の解釈
ハイデガーの初期「神学」論文 ハンス=ゲオルク・ガダマー
編者あとがき ギュンター・ノイマン
付録 『ナトルプ報告』の成立とその位置 高田珠樹
【付箋箇所】
16, 20, 25, 36, 39, 58, 63, 75, 99, 183, 192, 194
マルティン・ハイデッガー
1889 - 1976
高田珠樹
1954 -