2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧
伝統と革新(というか奔放)、美と戯、聖(というか異)と俗、両極を自在に行き来して自身の描画能力を存分に発揮した日本近世の突出した画家河鍋暁斎。 海外作家と比較するなら、ヒエロニムス・ボス、ブリューゲル父が思い浮かぶ。 ところが似ているところ…
購入して読んだ『反哲学入門』『反哲学史』がどちらも良かったので最寄りの図書館で検索して他のものにも手を伸ばしてみた。 戦後の混乱期に青春時代を過ごした著者が如何に哲学の世界に入っていったか、自身の生涯を振り返りつつ比較的ざっくばらんに書き上…
正字・正かなのドイツ語訳詩集。19世紀後半から20世紀初頭に活動した詩人を中心に31名140余篇を収める。正字・正かなであるが故のエレガントさと清々しさがあってちっとも古い感じはしない。 以下は収録詩人で題名をあげた作品には読みながら付箋を…
脳の可塑性について、どちらかといえば後天的に発症する機能障害の悲劇的側面に対峙することでもたらされるものを考察していこうとする試みの書。 脳の機能は可変的で後天的に損なわれることもあるということを基本として、人間の意識の活動を捉えようとして…
人の脳はけっして文字を読むように作られたわけではない。また、ヒエログリフや漢字を読む場合とアルファベットを読む場合では使用される脳の回路が異なっている。 近年大幅に進歩した脳の画像化技術と読字障害研究と文字成立の歴史から文字を操ることの後天…
『中世の秋』(1919)『ホモ・ルーデンス』(1938)を著したオランダの歴史学者ヨハン・ホイジンガが、第二次世界大戦下、自国オランダがナチス・ドイツの占領下にあった時、自国民を勇気づけようとして著したとされる著作。 絶頂期にあったオランダ17世紀を、政…
自作を語る画文集。未完成の不快感が作品に幻想作用を与えると言っている。 存在感の弱さ、表現技巧の弱さが、逆に魅力となる不思議。 版画を主戦場にモノクローム作品を制作していたが、58歳から油彩とパステルの色彩画に転向。モノクロームの制作のほう…
あまりにも優秀で実生活も充実している人の言葉に接したとき、それに比べてオレは何なのだろううちの家族は何なのだろうと鬱屈した思いに囚われることはままあることで、あまりに近づきすぎた天使的領域のエネルギーから活気づいてしまった悪魔的エネルギー…
ソクラテス、プラトン、カントなどと比較してアリストテレスの思想的特徴を述べることはあるものの、それをことさら強調してアリストテレスの独自性を焦点に自説を展開していくということはなく、あくまで『ニコマコス倫理学』のテキスト自体を整理しながら…
テレビでのコメントと同じく、短いなかにも芯を喰った独自の鑑賞眼を披露してくれていて、鑑賞者を飽きさせることなく何度も作品を見ることに誘導してくれる魅惑的なシリーズ。王道の選択を意図的に外すことを心掛け、比較的マイナーな作品を押しつけがまし…
ドゥルーズの芸術論に依拠しながら建築、音楽、絵画の三領域について展開される論考集。著者独自の主張よりも整理されたドゥルーズの思考の鮮烈さが印象に残る。本論のなかで直接引用されるものと原注で引用参照される章句の数々がそれこそそのまま刺激的で…