2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧
ブランショの主著の翻訳三分冊。基本は文芸批評であるが、時に対話作品が混在していることもあって、ブランショの思索を辿ることのできる大きなまとまりのひとつの文芸作品として存在しているような感覚が読後に残る。立ち止まっては茫然として、戸惑いを感…
批評家吉本隆明の著作の中でもひときわ完成度の高い思考の軌跡をたどることのできる一作ではないかと思う。突出した読み手として在ることと、読むことによって更新された表現の世界(対象)が同時に立ち上がってくるような感覚を味わうことができる読書経験…
AIが人間が用いている自然言語をどのように理解していて、それがどのように人間の知の領域に影響を与える可能性があるか、現時点での見通しを一般読者層に教えてくれるひとつのレポート。 脳の神経回路を模したコンピューターのニューラルネットモデルの研究…
現代日本で修辞学・レトリック学を学んでみようと調べると、まず佐藤信夫の著作に当たる。東京大学卒業後、雑誌社勤務、商社勤務を経て、大学のフランス語教師に至るまで、在野の研究者としての期間が長い批評家的気質あるいはエッセイスト的気質の強い著述…
年初から読み返しているT・S・エリオットの『四つの四重奏』のエビグラフに掲げられているヘラクレイトスの断片2と60に促されて、ヘラクレイトスの残された断片から見える思想の全体像に近づくために本書を手に取り、その先にひとつのヘラクレイスト像の極…
おかしさと愛らしさの擬人化されたいきものとばけもの。 躍動する線と、圧倒する柄と色彩。 堅苦しさに陥ることのない軽やかな生気の発露。 バカバカしさと緊張感のある様式美との狭間の危うさが誘うような痺れの感覚。 歌舞表現に制約があった時代の抜け道…
ピンとくる例示が多い楽しく読める入門書。その上内容も充実していてラカン思想に関する情報定着がずば抜けてよい。欲求、要求、欲望の違いを想起する際は本書が真っ先に浮かんでくるようになった。※システム業界の著作でHead Firstシリーズというのがあるが…
主体が「シニフィアンの蓄電池」であるというフロイト‐ラカンの認識を取り上げるなど、言語によって構成される人間存在の在りようを中心にラカン思想を取り上げるひとつの入門書。ラカンの全体像は見えにくいかも。全体像というよりラカンの方向性についてよ…
塚本邦雄の第17歌集。歌への愛憎極まったところで打ち出された渾身の500首。69歳の作品とは思えぬ生気、ゆるぎない情念と表現革新への意欲。 さくらなどこの世のほかの何ならむわれは心中(しんちゅう)に歌を弑(しい)せり 虚空とはかくもゆたけき虚…
韓国の現代詩人、アン・ドヒョン(安度昡)の第四詩集の邦訳。国内の政治闘争を背景に書かれた詩篇群で、韓国には日本とは別の力学や歴史の時間の流れがあるということを強烈に印象づけてくれる。近年のポピュリズムの動向とは違った、左派リベラルの闘争詩…
『十年』につづく高橋睦郎の第十句集。 人の世に出る哀しみ可笑しみ冷たさ温かみを手慣れた手つきで何事もないかのように掬いあげて見せてくれる稀に見る得難い翁が現示する今の世界のひとつの様相。生死の境が曖昧であるような空気感のなかで強烈なエロスと…
2025年は54歳になる。もういい年になっているので、今年は今までに読んできたものを再読したり読みを深めたりすることを意識していこうと心に決めた。 年初は岩波文庫でエリオットの『四つの四重奏』とスピノザの『エチカ』を再読し、三冊目に『エチカ…