2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧
芸術作品は有限を介して無限へ超越していくもので、利害を超えた自由と美しさを持つと説いた美学入門書。最終的には宗教の聖にも匹敵するものが美であるとして、徳との関係性についても検討しているところが特徴であろう。また、日本の美学者として、孔子の…
ラディカルに自律しているアート作品が、自律的行動主体たる私たちの自律性を脅かし、私たちの世界像に揺らぎを与えるとき、美的経験が成立するという趣旨の美学論考。新実在論による新しさは特になく、哲学が芸術に向けてきた眼差しの歴史をサラッとふり返…
1953年にフライブルク大学で行われた講義のテクスト。四年ぶりに平凡社ライブラリー版で再読。死後公開されたシュピーゲル対談も併せて読むことでハイデガーが恐れていたものがいかなるものであったのかがすこし明瞭に見えてきた。 すべてが機能している…
作品社から出ている仲正昌樹の講義シリーズの一冊。講義参加者と日本語訳書を頭から読み込んでいきながら、原典の用語を解説し、意味をより正確に捉えていこうと、比較的淡々と進められる講義。講義後の質疑応答まで見ると参加者のレベルも高そうで、実際に…
スピノザの翻訳で知られる畠中尚志の訳業。旧字旧仮名で読みはじめるまで多少の抵抗はあるが、読みすすめていくと意外と読みやすく訳も古びていないと感じる。原点を十分に咀嚼してこなれた日本語に移しかえられているため、他の新しい訳者の仕事とくらべて…
感情と文化的・創造的な心は、生命メカニズムを維持調節するホメオスタシス(恒常性)に由来するという仮説を、最先端の科学研究の成果とともに哲学的に論じた刺激的な一冊。生命が発生したこととともに、自他の区分、敵と味方の判別が生まれ、進化上複雑に…
現代短歌における修辞をめぐっての内向きで軽い調子のエッセイ集。 時代の流れは凄まじく、時代のリアルを31文字に収めようとして当時は成功していたと考えられたとしても、すぐに色褪せ古臭さを感じてしまう歌がほとんどだ、という状況に唖然とさせられる…
カラヴァッジョの専門家で、古今東西の美術作品に造詣が深く、同業者にも信頼されていることが文章からもうかがわれる著作で、紹介されている作家・作品も興味深いものばかりだが、2013年に一人娘であったお子様を失ってからの悲嘆と絶望のなか、自身が…
出版社側の謳い文句として「「怖い絵」シリーズ著者の新境地」とあるが、おそらくはページ数が足りないのだろう、章ごとにテーマを立ててそのなかで複数作品を論じるという体裁に、著者の独自性が薄められてしまっているような印象を持った。個々の作品の主…
出生の偶然性に始まる人生(本書では一派的にハズレとみなされる側の)をどう引き受けるかという論点をめぐって書かれたジャーナリスティックで哲学風味の著作。 個人の責任を追及するのではなく、社会制度を整え、人生に絶望することのないよう対話(主に傾…
20世紀前半から中盤にかけての現象学の大きな流れを身をもって受け止めた著者木田元が著した凝縮度の高い概説入門書。半世紀以上前に書かれたものなので、もはや古典と言ってもいい作品ではあるが、中身は現役、まだまだ一向に色あせる気配はない。 ドイツ…