読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

宮下規久朗『名画の生まれるとき 美術の力Ⅱ』(光文社新書 2021)

カラヴァッジョの専門家で、古今東西の美術作品に造詣が深く、同業者にも信頼されていることが文章からもうかがわれる著作で、紹介されている作家・作品も興味深いものばかりだが、2013年に一人娘であったお子様を失ってからの悲嘆と絶望のなか、自身が…

中野京子『異形のものたち 絵画のなかの「怪」を読む』(NHK出版新書 2021)

出版社側の謳い文句として「「怖い絵」シリーズ著者の新境地」とあるが、おそらくはページ数が足りないのだろう、章ごとにテーマを立ててそのなかで複数作品を論じるという体裁に、著者の独自性が薄められてしまっているような印象を持った。個々の作品の主…

戸谷洋志『親ガチャの哲学』(新潮新書 2023)

出生の偶然性に始まる人生(本書では一派的にハズレとみなされる側の)をどう引き受けるかという論点をめぐって書かれたジャーナリスティックで哲学風味の著作。 個人の責任を追及するのではなく、社会制度を整え、人生に絶望することのないよう対話(主に傾…

木田元『現象学』(岩波新書 1970)

20世紀前半から中盤にかけての現象学の大きな流れを身をもって受け止めた著者木田元が著した凝縮度の高い概説入門書。半世紀以上前に書かれたものなので、もはや古典と言ってもいい作品ではあるが、中身は現役、まだまだ一向に色あせる気配はない。 ドイツ…