読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジャン=フランソワ・リオタール『ポスト・モダンの条件 知・社会・言語ゲーム』(原著 1979, 訳:小林康夫 水声社 叢書言語の政治 1986)

初読。

大きな物語の失墜したポスト・モダンの時代を告げる宣言の書かと思っていたが、ちょっと違った。60年代後半からポスト・インダストリーという概念とともに主にアメリカで言われはじめたポスト・モダンの時代状況を、検討分析し報告するという形式の、比較的冷静な研究書といった書物だった。それでも、ウィトゲンシュタイン言語ゲームの概念を用いて、社会が多数の言語ゲームから成立している状況を描き出し、それをパラロジーという多様な知の在り方を認める知の論理として未来に向けて積極的に解き放っていこうという姿勢が、大きな影響力を持ち、本書を有名にしていったのだろうと感じた。ニコラス・ルーマンのシステム理論を現状追認に過ぎず、ハーバーマスの議論を通してのコンセンサス理論をモダンへの回帰と批判しているところにも哲学者リオタールのラディカルさが現われていて記憶に残る。

 

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【目次】
第1章 領野/情報化社会における知
第2章 問題/正当化
第3章 方法/言語ゲーム
第4章 社会的関係/モダン時代における二者択一
第5章 社会的関係/ポスト・モダンの展望
第6章 物語的知の言語行為
第7章 科学的知の言語行為
第8章 物語的機能と知の正当化
第9章 知の正当化の物語
第10章 脱正当化
第11章 研究と遂行性によるその正当化
第12章 教育と遂行性によるその正当化
第13章 不安定性の探究としてのポスト・モダン時代の科学
第14章 パラロジーによる正当化

【付箋箇所】
8, 42, 43, 57, 62, 66, 74, 88, 93, 103, 105, 113, 117, 118, 122, 146, 155, 160, 223, 227

ジャン=フランソワ・リオタール
1924 - 1998

ja.wikipedia.org

小林康夫
1950 -

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