読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

江川隆男 超人の倫理 <哲学すること>入門

江川隆男 超人の倫理 <哲学すること>入門

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2013

スピノザ解釈が衝撃的。
とくに第二章の「精神と身体は並行していると考えること」のなかの「物体は身体であり、身体は物体である」(p91~96)は衝撃的で、そこで主張されている内容にはなかなか慣れることはできない。

「すべての個体は、程度の差こそあれ、精神を有しているのである。(スピノザ『エチカ』第二部、定理一三・備考)」の引用の後、著者は次のように述べている。

 

私たちの前にある机や椅子は、一つの物体(=身体)です。つまり、それらは、それぞれに自己の身体を有しているのです。それゆえ、机や椅子は、並行論に従えば、その身体に対応した精神を有していることになります。物体があるところには必ず精神があるということは、その物体は、単なる物体ではなく、身体であるということになります。(p93)

 

ここでは付喪神や山川草木悉皆成仏などの日本的な発想とは異なる唯物論的汎精神論が語られている。スピノザによれば唯一の実体は神=自然なのであるから、物も人間も神=自然として異なるところはないという解釈が導き出されても何の不思議もないのであるが、著者のようにパラフレーズされると破壊力が驚くほど増すことになる。

 

内容:
序論 超人への倫理
第一章 道徳と倫理の差異
 〈善/悪〉と〈よい/わるい〉との差異を知ること
第二章 超人の身体
 精神と身体は並行していると考えること(=倫理作用Σ)
第三章 超人の認識
 遠近法主義を再学習すること(=倫理作用Ψ)
第四章 超人の原理
 意志のもとでは何事も決定されず、意志ほど愚鈍な(判断力のない)ものはないということ(=倫理作用Π)
結論に代えて(実験としての超人)

江川隆男
1958 -