本物の凄さが伝わる。無実の身で国家権力により投獄された中で書かれたスピノザ論。無神論者、唯物論者、脱ユートピアの思索者スピノザという視点。ホッブズ―ルソー―ヘーゲルの三人組に対立するマキャヴェッリ―スピノザ―マルクスの三人組を形づくる政治論者スピノザ。いまこそ共産主義を考えようという論者は多くいるなかで、アントニオ・ネグリのスピノザ発のオルタナティブには、乗っかりたくなる魅力がある。
スピノザの思想は、かれの時代にあって異形であった。そのことが野生の異形を形成す。なぜ野生かと言えば、それは限界を知らぬ無限の寛容さから生じたさまざまな肯定の強度と多様性へと、スピノザの思想が分節化されていったからである。スピノザのもとには、無限の存在の快楽がある。(中略)スピノザの存在論のなかには、つねに新たなものがある。その展開の場となった、歴史的存在論においてばかりではなく、存在の裂け目から、その深みから発出する、本質的存在論においてもそうなのである。(中略)野生の異形とは、無限の組織化の質であり、無限と規定のあいだの、傾向性と制約とのあいだの緊張関係の主要な特徴である。この緊張関係によって、無限が持っている力能が現前するにいたる。(第9章「差異と未来」p479)
いまさらながら『帝国』や『マルチチュード』も読みすすめてみようとおもった。どういった経済になるのかについての具体的なイメージについても補強してくれるかもしれない。
目次:
序文
ジル・ドゥルーズ
ピエール・マシュレ
アレクサンドル・マトゥロン
第1章 オランダという異形
第2章 スピノザ・サークルのユートピア
第3章 第一の創設
第4章 イデオロギーとその危機
第5章 体系の中断
第6章 野生の異形
第7章 第二の創設
第8章 現実の構成
第9章 差異と未来
アントニオ・ネグリ
1933 -
ジル・ドゥルーズ
1925 - 1995
ピエール・マシュレ
1938 -
アレクサンドル・マトゥロン
1926 - 2020
杉村昌昭
1945 -
信友建志
1973 -
バールーフ・デ・スピノザ
1632 - 1677