シリーズものにはかなり当たりはずれがあって、本シリーズ、河出書房新社の「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 全6巻」はかなりの当たり。画家の全画業をまんべんなくピックアップしながら、図版として選択されている作品は代表作と注目作両方に目が行き届いたうえに、個性が出ている。マックス・エルンストに関しては第二次世界大戦後にアメリカのアリゾナに滞在していたころからの色彩豊かな抽象的風景画が多く取り上げられていて、とても新鮮だった。ダダやシュルレアリスムの作品とは一味違ったモチーフと色彩感覚を伝えてくれているところがありがたい。
カテゴリ毎に集められた作品の最後に付けられた解説は短いながら凝縮された案内となっていて、鑑賞をよく助けてくれる。エルンスト自身の貴重な発言なども盛り込まれていて、画家の存在がより近くに感じることもできる。センスある造りの美しい画集だ。
本シリーズ、ほかの5作のラインナップは、ルネ・マグリット、ハンス・ベルメール、ポール・デルヴォー、マン・レイ、ゾンネンシュターン。かなりマニアックなところも、期待感を高まらせてくれる。
マックス・エルンスト
1891 - 1976
大岡信
1931- 2017