読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

思潮社現代詩文庫205『田原詩集』(2014)

風化したあとの白骨の白さのイメージをそこここに滲ませながら、いまを生きることを謳う、日本語と中国語のふたつの言語で詩を書く詩人の詩集。日本語による詩集二冊と未刊詩篇、日本人翻訳者による中国語訳詩篇からなる珍しいアンソロジー。日本語で書く詩と、中国語で書く詩の、抒情の肌触りの違いも感じとることができるのも希少かつ貴重。密にからみつくようなところの多い日本語の表現と、どこか開放的で且つ残酷さも秘めている中国語の表現の対照があるような気がする。収録作品のなかでは、天安門事件に関係した人物二名への追悼詩と、自殺してしまった大学の友人への追悼詩が傑出している。悲しみと憤りを持ちながら、孤独や孤立がくることもおそれず、我が道を歩む姿が彷彿とする。

田原 ティエン・ユアン

1965 -