読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

エルヴィーン・パノフスキー『芸術学の根本問題』(原著 1964, 1974, 細井雄介訳 中央公論美術出版 1994)

最初に哲学書房(1993)、のちに筑摩書房より文庫化(2009)された『<象徴形式>としての遠近法』を含むパノフスキーの代表的な美術論集。

ひとつの文章が長くて、内容自体も凝縮されたものであるために、じっくり根気よく付き合っていかないと読み通すのが難しいかもしれない。

売価税抜き20000円。

価格設定からして読み手を選んでいる。それなりの読みの深さと広さで迎え撃たないと、購入した心は折れてしまうのではないだろうか。ちなみに私は図書館からの貸し出し。

本書におけるパノフスキーの主たる関心は、美術史における形式と内容の進展をエジプトの彫塑的かつ平面的な表現様式から透視図法による近代的な奥行きのある立体的な表現様式への移り変わりを跡づけることで、思考の型としてはカント派の哲学的アプローチを信条としている。

透視図法は価値契機でなくとも様式契機ではあり、それどころかさらに、エルンスト・カッシラーのみごとに打ち出した用語を芸術史でも利用すれば、これによって「精神的意義内容が具体的な感覚的記号に結びつけられて、この記号の内的なものとなる」という、あの「象徴形式」の一つと呼ばれてよいのであり、そしてこの意味では、透視図法をもつか否かばかりか、いかなる透視図法をもつかということも個々の芸術時期や芸術領域にとっての本質的重要事である。
(「「象徴形式」としての透視図法」より)

世界観や作品の使用目的に結びついている各時代各地域の表現様式が表現内容をも左右しているという視点がある。例えば古代エジプトの芸術の大部分は、墓所に飾られ人に見られることを前提としていないものであったということなども強調されていたりする。芸術に分類されるものの発生と展開を生産活動の中心地の移動とともに超長期間にわたって考察しているところが印象に残る書物。

 

中央公論美術出版 エルヴィーン・パノフスキー『芸術学の根本問題』

 

www.chikumashobo.co.jp


【目次】
芸術学の根本問題
「造形芸術における様式の問題」
芸術意思の概念
ハインリヒ・ヴェルフリン
芸術史と芸術理論の関係について―「芸術学的基礎概念」の可能性解明のために
歴史的時間の問題について
造形芸術作品の記述および内容解釈の問題について
「象徴形式」としての透視図法
様式史の反映としての人体比例理論史


【付箋箇所】
8, 11, 13, 17, 28, 29, 37, 38, 41, 44, 48, 50, 56, 67, 68, 71, 74, 75, 77, 78, 81, 97, 106, 116, 121, 122, 123, 129, 132, 133, 138 139, 143, 17, 173, 216, 217, 234, 235, 29, 255, 261, 263, 264, 265, 267, 


エルヴィン・パノフスキー
1892 - 1968
細井雄介
1934 -