意識は自由であり、その自由は知覚の現実世界を無化したところにある想像力の非現実世界において実現する。こうまとめてしまうと反動的な思考のようにもとらえられてしまいそうだが、そうではない。カントの『判断力批判』とは異なる視点からの美学、芸術論として、現象学の志向性の観点から意識の二つの志向性の一方として存在する想像力がもたらす非現実の像の世界を多角的に考察している。眼前の物体そのものではなく記号や像についての広範囲にわたる思索で、欲を言えば言語についての論考があまりないのが残念なところだが、サルトル自身の小説や戯曲が生みだされる思想的背景ともなっている魅力的な作品である。サルトルの『イマジネール』への献辞を持つロラン・バルトの写真論『明るい部屋』をはじめとして、サルトル以後の主にフランスの思想界に大きな影響を与えている。
見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ
有名な藤原定家の歌にうたわれた不在の花と紅葉の美を思い浮かべながら読みすすめていた。
【目次】
序(アルレット・エルカイム=サルトル)
第一部 確実なもの
第一章 記 述
第二章 イメージの仲間
第二部 蓋然的なもの
第三部 心的生におけるイメージの役割
第四部 想像的生
結 論
訳者解説(澤田直)
【付箋箇所】
47, 50, 72, 92, 142, 150, 180, 212, 222, 225, 280, 294, 301, 308, 316, 329, 378, 390, 404, 405, 407, 410, 412, 415, 421, 425, 435, 436, 437, 442, 449, 451,
特に
301, 316, 329, 390, 405, 410, 415, 449
ジャン=ポール・サルトル
1905 - 1980
澤田直
1959 -
水野浩二
1952 -