読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

松岡正剛『うたかたの国 日本は歌でできている』(工作舎 2021)

松岡正剛の日本の詩歌に関する文章を、イシス編集学校で学んだ歌人でもある編集者米山拓矢(米山徇矢)がまとめ上げた、濃密な一冊。多くの本から切り取られた断片の集積であるにもかかわらず、古代から現代までの日本の詩歌芸能の推移を追うようににして積み上げられた断章群は、松岡正剛自らが執筆する単著を超えるほどのまとまりをもって歌を背骨として持つ日本文化の姿を伝えてくれている。松岡正剛自身が「自分が書いたとは思えないほど気持ちよく揺籃できた」と唸るほどの一冊。フラジャイルで命懸けの日本の言葉の操り手たちへの賞賛と共感に満ちた正剛語録集成。恐ろしいまでの博覧強記ぶりに唖然としながら、まずは読み通してみることをお勧めする。

まず、遊んでいるものたちがいた。遊びはもともと出かけることだ。その遊びを管理することは不可能である。ノマドジーの郷愁は、あえて止まろうとする意志をもはねつける。

遊び上手な人たちがいて、それにあこがれはするが遊び下手な人もいるわけで、その時遊び下手はどうしたらいいものか、ハタと困ってしまうところもあるのだが、気になって仕方がないならば、まずはしっかり見つめて、二度三度と本当に参ってしまうところからはじめてみるしかない。

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【目次】
1 うたの苗床―音と声と霊
2 記紀万葉のモダリティ―古代
3 仮名とあわせと無常感―平安
4 百月一首―うたの幕間
5 数寄の周辺―中世
6 道行三百年―近世
7 封印された言葉―近現代

 

松岡正剛
1944 - 
山拓矢(米山徇矢)
1975 -