読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

矢内原伊作+宇佐見英治『対談 ジャコメッティについて』(用美社 1983)

日本で最初期にジャコメッティに注目し、それぞれ渡仏しジャコメッティ自身と深い交流を持ったふたりの文学者による対談。1980年に日本で開催された「ジャコメッティ版画展」の最終日におこなわれた公開対談をベースに、出版を念頭において改めておこなわれた二日間にわたる対談をおさめている。また長くジャコメッティのモデルをつとめた矢内原伊作が芸術家のアトリエで撮った写真を数多くおさめている。

見えるものを見えるとおりに、視覚とそれがもたらしたイメージそのものを絵画や彫刻の約束事を超えて表現しようとしたジャコメッティの特異さ、孤高の志向性が、創作現場のごく身近なところで見た優れた鑑賞者の立場から語られている。ジャコメッティの生の言葉が直接取り上げられているわけではないので、ジャコメッティの偏執狂的ともいえる強烈な創作活動については特段強調されてはおらず、興味を持つのに抵抗は生まれないような紹介になっていると思う。

西洋絵画の歴史のなかで表現に関しての徹底した探究を行った人物として、セザンヌを受け止めさらに徹底していったジャコメッティというラインを指摘しているところにも、ジャコメッティの創作への力強い導入が込められている。


【付箋箇所】
35, 37, 43, 53,  70, 91, 93, 96,  99, 132, 133, 137, 141, 

アルベルト・ジャコメッティ
1901 - 1966

ja.wikipedia.org

矢内原伊作
1918 - 1989

ja.wikipedia.org

宇佐見英治
1918 - 2002

ja.wikipedia.org