古事記を核に論じた日本の神話と詩の発生に関するエッセイ「神話の構造のためのエセー」(現代詩手帖 1979.11)と0年代に物された連作詩篇「語らざる者をして語らしめよ」のカップリングの一冊。矮小でありながら超越し、超越していながらきわめて矮小な日本古来の神々の姿。主として『古事記』に取材した日本的な神の存在と日本の詩歌の関わりについてこう考察「神話の構造のためのエセー」の延長線上で書かれた連作詩篇「語らざる者をして語らしめよ」が二十数年の時を経て響き合う器を得た。
人間が神神から決定的に分離されたとき、神謡から詩がちぎり捨てられた。
(「神話の構造のためのエセー」より)
恋し 子を産み 老い 生を終える
これこそが カミの限界を超える喜び
ヒトは恋の果て 死んで永遠になる
(「語らざる者をして語らしめよ」より)
日本的な神のふるまいの追跡と称揚とともに、神から離れた人の営みの顕彰を旨とした硬質な詩篇。常には儚く幽かである者たちが、時に荒ぶるものとなる移り変わりを、人にも神にも安住することのない詩人の眼で見つめ、詩人の言葉で書き記した記念碑的な著作。繰り返し読むに値する著作。
【目次】
語らざる者をして語らしめよ
神話の構造のためのエセー
【付箋箇所】
7, 19, 49, 54, 59, 81, 83, 84
高橋陸郎
1937 -