読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

頼住光子『道元 自己・時間・世界はどのように成立するのか』(2005)

井筒俊彦『コスモスとアンチコスモス』で道元への言及があったので、道元についての情報を補強しようと思って読んでみたが、井筒俊彦だけで十分かもしれないと思った。100ページ程度の著作なので、まあ、欲をかいてはいけない。

通常の認識においては、認識を言語化して生まれる概念が固定化され、準拠枠となって認識を支配する。人は、この固定化された準拠枠によって事物と接し、日常のさまざまな事態に対応する。しかし、規制の枠組みでは処理できない「語句」が、この固定化された認識の枠組みそれ自体を破壊する。それが「語句の念慮を超脱する」である。
そして、道元に即して先取りしていうならば、その言葉は固定化を打ち破るとともに、さらに新たなる認識をもたらすものでもある。真理を指し示す「青山常運歩」っという言葉には、先入観を破るという役割と、新たな認識をもたらすという役割があるということになる。(「真理と言葉」p35-36)

「青山常運歩」は「せいざんじょううんぽ」で「山は常に歩いている」という意味の言葉。「固定化された準拠枠」を打ち破る仏教的実践の例として取り上げられている。本書では「青山常運歩」の山が歩いていることの驚きや認識のショックまでは連れて行ってもらっていない。山頂アタック前の中腹あたりまでのガイドを受けたような感覚。

 

www.nhk-book.co.jp

内容:
第一章 真理と言葉
第二章 言葉と空
第三章 自己と世界
第四章 「さとり」と修行
第五章 時・自己・存在

 

頼住光子
1961 -
道元
1200 - 1253