読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

橋本治『ひらがな日本美術史』全章タイトル

橋本治『ひらがな日本美術史』を読もうと思ったのは、浅田彰橋本治の対談「日本美術史を読み直す」を読んだため。

REALKYOTO – CULTURAL SERACH ENGINE » 対談:橋本 治 × 浅田 彰「日本美術史を読み直す」


浅田彰は『ひらがな日本美術史』を教科書にすべきだといっているが、それはかなり難しいだろう。橋本治の評価・断言・放言は気合が入っていることもあって万人向きではないだろうからから。そして、七冊も読んでしまうと、橋本治の思考に感染すること間違いなしであるから。「いいものはいい」の視点から落ちてしまったものをひろったり、中和していくことも少しは必要になってくるのではないかと思ってしまうほど、影響力の強いシリーズだと思う。

原稿用紙の向こうに、「自分の信じられる美しい日本がある」―そう思えるのは幸福で、「美しい」のは「そこに美術があるから」ではなくて、「そこに生きている人のあり方が美しいから」だ。その意味で、「ひらがな日本美術史」は、「美術史であること」を大幅に無視していると思うが、それは、「ひらがな」という四文字に、「日本人のあり方」を見たいと思い、見てしまう私のありようによることで、仕方のないことだと思う。(『ひらがな日本美術史7』「あとがき」p236)

 「芸術新潮」13年間にわたる連載の成果。

 

全目次:
その一   まるいもの 「埴輪」
その二   きれいなもの 「銅鐸」
その三   不可思議な世界を誕生させたもの 「寺」
その四   顔の違うもの 「法隆寺釈迦三尊像」前編
その五   聖徳太子でもあるようなもの 「法隆寺釈迦三尊像」後編
その六   不思議に人間的なもの 「中宮寺菩薩半跏像」
その七   夢のようなもの 「法隆寺金堂旧壁画」
その八   自由であるようなもの 「法隆寺金堂天井板落書」
その九   無慈悲に美しいもの 「源氏物語絵巻
その十   豊かさというもの 「神功皇后坐像」
その十一  ふくよかなものの変遷 「鳥毛立女屏風」と「源氏物語絵巻
その十二  物語であるようなもの 「伴大納言絵巻」
その十三  マンガであるようなもの 「信貴山縁起絵巻」と「伴大納言絵巻」
その十四  テーマパークであるようなもの 「平等院鳳凰堂
その十五  ポルノではないもの 「餓鬼草紙」と「病草紙」
その十六  恐ろしいもの 「教王護国寺講堂の彫像群」
その十七  愛すべき美しいもの 「三嶋大社の梅蒔絵手箱」
その十八  鎌倉時代的なもの 康慶作「法相六祖坐像」
その十九  人として共感出来るもの 運慶作「無著菩薩・世親菩薩立像」
その二十  古典的であるようなもの 快慶作「浄土寺阿弥陀三尊像」
その二十一 コミュニティを感じさせるもの 「東大寺南大門」
その二十二 歪んでいるのかもしれないもの 運慶作「八大童子立像」
その二十三 男の時代にふさわしいもの 「平治物語絵巻」前編
その二十四 それでも古典的なもの 「平治物語絵巻」後編
その二十五 得意なものと苦手なもの 「蒙古襲来絵巻」
その二十六 大和絵というもの 「北野天神縁起絵巻」
その二十七 さまざまな思惑のあるもの 神護寺「伝源頼朝像」
その二十八 なるようになったもの 藤原定家筆「小倉色紙」
その二十九 似絵というもの 藤原豪信筆「花園天皇像」
その三十  科学するもの 「小柴垣草子絵巻」
その三十一 まざまざと肉体であるようなもの 「稚児草子」
その三十二 とんでもなく美しいもの 「鹿苑寺金閣
その三十三 動き出そうとするもの 「日月山水図屏風」
その三十四 神や仏の宿るもの 「那智瀧図」「山越阿弥陀図」
その三十五 わかりやすいもの 雪舟筆「山水長巻」
その三十六 わかりにくいもの 雪舟筆「破墨山水図」
その三十七 意外とメルヘンなもの 黙庵筆「四睡図」
その三十八 生け花が生まれた時代のもの 「龍安寺石庭」
その三十九 平均値的なもの 狩野正信筆「山水図」
その四十  日本的なもの 狩野元信筆「四季花鳥図」
その四十一 まざりあうもの 「洛中洛外図屏風
その四十二 スペクタクルなもの 「日光東照宮
その四十三 絢爛たるもの 「能装束」
その四十四 遊んでいるようなもの 「変り兜」
その四十五 身分の低かったもの 「辻が花小袖」
その四十六 女のもの 「高台寺蒔絵」
その四十七 カッコいいもの 「泰西王侯騎馬図屏風」
その四十八 安土桃山時代的なもの 狩野永徳筆「唐獅子図屏風」
その四十九 美しいもの 長谷川等伯筆「楓図襖」と長谷川久蔵筆「桜図襖」
その五十  ジャズが聞こえるもの 長谷川等伯筆「松林図屏風」
その五十一 空間を作るものの変遷 狩野探幽筆「二条城二の丸御殿障壁画」
その五十二 油絵のようなもの 長谷川等伯筆「烏鷺図屏風」と岩佐又兵衛筆「人麿・貫之図」
その五十三 白いもの 「姫路城」
その五十四 そこら辺にあるもの 「柳橋水車図屏風」
その五十五 人間的なもの 狩野秀頼筆「高雄観楓図屏風」と狩野長信筆「花下遊楽図屏風」
その五十六 過ぎ去ったもの 「彦根屏風」
その五十七 びっしりとひしめくもの 伝岩佐又兵衛筆「豊国祭礼図屏風」
その五十八 色っぽいもの 「松浦屏風」
その五十九 さわるもの 本阿弥光悦作「白楽茶碗 銘不二山」
その六十  かなり屈折したもの 狩野山雪筆「老梅図襖」「梅に山鳥図襖」
その六十一 センスのいいもの 「誰が袖屏風」
その六十二 素性の知れぬもの 俵屋宗達筆「風神雷神図屏風
その六十三 笑うもの 俵屋宗達筆「田家早春図」
その六十四 勝つもの負けるもの 本阿弥光悦書&俵屋宗達筆「四季草花下絵古今集和歌巻」
その六十五 大胆なもの 本阿弥光悦作「舟橋蒔絵硯箱」
その六十六 ひたむきなもの 尾形光琳筆「燕子花図屏風」
その六十七 紆余曲折するもの 尾形光琳筆「紅白梅図屏風」前編
その六十八 ジヴェルニーに通じるもの 尾形光琳筆「紅白梅図屏風」後編
その六十九 人間のあり方を考えさせるもの 「桂離宮
その七十  大衆的なもの 「大津絵」
その七十一 祈るもの 「円空仏
その七十二 骨太なもの 菱川師宣筆「見返り美人図」と懐月堂安度筆「遊女と禿図」
その七十三 ボランティアなもの 鈴木春信筆「水売り」
その七十四 知的なもの 石川豊信筆「花下美人図」と鈴木春信筆「藤原敏行朝臣
その七十五 “終わり”の始まりとなるもの 円山応挙筆「雪松図屏風」
その七十六 へんなもの 曾我蕭白筆「群仙図屏風」「商山四皓図屏風」
その七十七 もしかしたらそうかもしれないもの 曾我蕭白筆「群仙図屏風」「唐獅子図」
その七十八 曲がり角に来ていたもの 長沢蘆雪筆「龍虎図襖」と与謝蕪村筆「夜色楼台図」他
その七十九 ひとりぼっちなもの 伊藤若冲筆「動植綵絵」「群鶏図押絵貼屏風」
その八十  前衛的なもの 浦上玉堂筆「奇峯連聳図」
その八十一 全盛なもの 喜多川歌麿筆「當時全盛美人揃 瀧川」
その八十二 ルネサンスになる前のもの 喜多川歌麿筆「婦人相學十躰 ポッピンを吹く娘」
その八十三 歴史のようなもの 「盆栽」
その八十四 キーワードがないもの 「葵紋散牡丹唐草蒔絵乗物」「初音の調度」
その八十五 携帯電話が学ぶべきもの 「印籠」「根付」
その八十六 「似ている」が問題になるもの 東洲斎写楽の役者絵
その八十七 「似ている」が問題になるもの 第二番目 東洲斎写楽の役者絵
その八十八 「似ている」が問題にならないもの 勝川春英筆「七世片岡仁左衛門高師直
その八十九 時代を二つにわけるもの 初世歌川豊国筆「役者舞台之姿絵」
その九十  前近代的なもの 葛飾北斎の読本挿絵
その九十一 ドラマするもの 葛飾北斎筆「絵本隅田川両岸一覧」
その九十二 天っ晴れなもの 葛飾北斎筆「冨嶽三十六景」
その九十三 非日常的で日常的なもの 喜多川歌麿筆「歌まくら」
その九十四 不思議に我慢をしているもの 五渡亭国貞、渓斎英泉の錦絵
その九十五 うねるもの 歌川国芳筆「宮本武蔵の鯨退治」
その九十六 うねるもの續篇 歌川国芳筆「宮本武蔵の鯨退治」
その九十七 うねるもの残篇 歌川国芳筆「荷宝蔵壁のむだ書」他
その九十八 文化なもの 京都島原「角屋」
その九十九 遠いもの 小田野直武筆「不忍池図」
その百   前を向くもの向かないもの 渡辺崋山筆「鷹見泉石像」「市河米庵像」
その百一  横を向くもの 月岡芳年・落合芳幾筆「英名二十八衆句」と落合芳幾筆「真写月花乃姿絵」
その百二  芝居の質を変えたもの 歌川広重筆「東海道五拾三次」
その百三  弥生的ではないもの 縄文土器
その百四  近代的なもの 井上安治筆「築地海軍省
その百五  鮭が語るもの 高橋由一筆「鮭」
その百六  日本人の好きなもの 黒田清輝筆「湖畔」
その百七  近代日本の指導者達が求めたもの 狩野芳崖筆「大鷲」「悲母観音」
その百八  「君の行く道は」的なもの 高村光雲作「老猿」と高村光太郎作「手」「柘榴」
その百九  「君の行く道は」的なもの part2 岸田劉生筆「切通之写生」と青木繁筆「わだつみのいろこの宮」
その百十  「君の行く道は」的なもの 完結篇 川端龍子筆「源義経ジンギスカン)」
その百十一 美術とは関係ないかもしれないもの 「旧東京市本郷区駒込千駄木町五十七番地住宅
その百十二 「アール・デコ」なもの キネマ文字
その百十三 ただ「私は見た」と言っているもの 今村紫紅筆「熱国の巻」
その百十四 堂々たるもの 竹久夢二の作品と梶原緋佐子筆「唄ヘる女」
その百十五 堂々たるもの 2 竹久夢二筆「立田姫
その百十六 海の向こうから来たもの 梅原龍三郎筆「雲中天壇」と佐伯祐三筆「扉」
その百十七 讃歎するもの 棟方志功筆「鍵版画柵」「釈迦十大弟子
その百十八 「マンガ」に属したもの 谷内六郎の作品と六浦光雄の作品
その百十九 卒業式のようなもの 亀倉雄策作「東京オリンピック」ポスター

橋本治
1948 - 2019