読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「詩人」(From the Eastern Sea 1903『東海より』より)

詩人

深淵と暗黒をつん裂いて、
輝き出づる神秘、一つの姿、
完全なる物、
恰(あたか)も太陽の上るが如し。
ああ、その呼吸は香しく、
その両眼は星の道を照らし、
その顔に微風あり、
彼は空にかかる幻想(まぼろし)の如く歩み、
永劫の熱情を放散しゆく。
彼は朝日の輝きに住居し、
その言葉は夕暮れの音楽なり。
人若し彼の視線に会へば、
直(ただち)に墳墓もの塵を離れ、
瑞樹の森へと動かざるを得ない。

(From the Eastern Sea 1903『東海より』より)

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.013