読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

中島隆博『荘子の哲学』(講談社学術文庫 2022, 岩波書店 2009)

荘子』においてある物が他の物に生成変化することは「物化」と呼ばれていたと中島隆博によって要約されている部分があることが端的に示しているように、荘子の物化をドゥルーズの生成変化に引き付けて解釈し直す刺激的な書物。後半の第二部での独自性の強い荘子解釈の部分は特にそうだが、全体として1995年に亡くなったドゥルーズへのオマージュであり、渾身の追悼の書ともなっていて、読み終えたときにはなんだか泣きそうになった。また、教え子の千葉雅也の思想が中島隆博から出てきたということも納得できる書物で、読む者の自己と世界の変容に道を拓いていく力強さがあった。情動に直悦的に働きかけてくる良書である。

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【付箋箇所】
12, 26, 31, 36, 41, 50, 69, 75, 80, 106, 137, 145, 149, 161, 163, 167, 172, 175, 179, 187, 192, 199, 203, 212, 215

目次:
プロローグ
■第1部 書物の旅路 『荘子古今東西
第一章 『荘子』の系譜学
第二章 中国思想史における『荘子』読解――近代以前
第三章 近代中国哲学と『荘子』――胡適と馮友蘭
第四章 欧米における『荘子』読解
■第2部 作品世界を読む 物化の核心をめぐって
第一章 『荘子』の言語思想――共鳴するオラリテ
第二章 道の聞き方――道は屎尿にあり
第三章 物化と斉同――世界そのものの変容
第四章 『荘子』と他者論――魚の楽しみの構造
第五章 鶏となって時を告げよ――束縛からの解放
エピローグ
参考文献ガイド
荘子』篇名一覧
学術文庫版へのあとがき

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中島隆博
1964 - 
    

参考:

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com

千葉雅也の私小説『デッドライン』では、(名前は出ていないが)決定的な人物として中島隆博が登場している。小説の登場人物としての中島隆博の存在感も鮮やかなものだった。

uho360.hatenablog.com