読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

アンリ・ミショー『ひとのかたち』(平凡社 2007)

東京国立近代美術館で開かれた回顧展にあわせて出版されたアンリ・ミショーの日本独自の詩画集。画業の全期間をカバーした全59点の絵画・デッサンと、その絵が生まれた情況に寄り添うような詩人自身の言葉からなる一冊は、アンリ・ミショーの詩人と画家の両面を一度に味わえる、格好の構成となっている。

予想外の言語と画像が、鮮明な解像度でしっかりミショーの独自色を主張しているところが、特徴的。

日常とは違うものに出会えるのが芸術や文芸の良いところ。作家たちが押し広げた感覚や理性の限界領域に、権利や条件などと一切関係なく、導いてくれる。訳が分からず、途方に暮れてまうこともよくあることではあるのだけれども、生きているうちに予想外のものに刺激されるのは、それほど悪いことではない。ミショーのうごめきひしめき合う記号状にも原生生物にも亡霊にも悪魔にもミュータントにも見える形象の数々は見るものの心をざわつかせずにはおかない。表象が生まれようとする現場に立ち会っているかも知れないというおののきが体を走る。

www.heibonsha.co.jp

【付箋箇所】
18, 76, 99, 100

目次:

絵画とテクスト Paintings and Texts

アンリ・ミショー、詩人への私の近づき :瀧口修造
アンリ・ミショー ひとのかたち :中林和雄
Henri Michaux / Emerging Figures :Kazuo Nakabayashi

アンリ・ミショーの生涯
作品リスト List of Works 

アンリ・ミショー
1899 - 1984