谷川俊太郎、88歳から89歳にかけて書かれた新作の十四行詩、88篇。
短い行脚で、繰り返し読んでいると、息継ぎのリズムが心の芯に染み透ってくるような、静かで清められた言葉の力を感じる。
最長で11字、「沈黙を抱きとめる夕暮れ」「決してなくならないそれ」。
沈黙と境を接しているようでいて、かき消されることなく、しっかりと響く言葉。言葉であることの権利を淡々と主張しているような言葉。
蝶は飛ぶ
淡々と
意味なく
自然に
空白が
空を借りて
余白を満たす(「残らなくていい」より)
4回通読し、いま、70年の詩作でつねに新しくあり続ける詩人がいることの驚きに打たれている。
谷川俊太郎
1931 -