初読、と言っても、今時点で三周くらいはしている。
1996年にノーベル文学賞を受賞した後の、70代以降の作品を集めた最晩年に刊行された詩集。
全23篇の詩篇に、訳者解説がそれぞれ付く。
解説は、初読で読むか、後から読むかはあらかじめ決めておいた方がよいかもしれない。
解説を初読で読む場合は、詩集全体の印象よりも、作品ごとの背景や、成立事情が色濃く残る。
ここからは、私の全体的な感想。
シンボルスカがノーベル賞だったら、谷川俊太郎(1931~)もノーベル賞でよかったんじゃないかなぁなどと思いながら読んでいたことに気づいた。
生に振り回されながらも、それを肯定的に捉えるところなど、似ているといえば結構似ている。
谷川俊太郎リーダーであれば、ぜひ読んでみるべき詩人だ。そう思う瞬間が多く現われてきた。
人は魂を持っていることがよくある。
絶え間なく、ずっと持っている人は
いない。何日も
何年も
魂なしで過ぎることもある。(「魂について一言」冒頭)
本書は、訳者の沼野充義が病を得ながらも、入院中に成した特別な訳業でもある。
支えのように、ともに生きる言葉を持てることの実践を、目にし接することは、励ましであるとともに問い掛けともなった。
目次:
瞬間
ひしめき合う世界で
雲
陰画
受話器
とてもふしぎな三つのことば
植物たちの沈黙
プラトン、あるいはどうして
小さな女の子がテーブルクロスを引っぱる
思い出すこと
水たまり
初恋
魂について一言
未明
公園で
統計の説明
ある人たち
九月十一日の写真
帰りの手荷物
舞踏会
覚え書き
一覧表
すべて
ヴィスワヴァ・シンボルスカ
1923 -2012
沼野充義
1954 -