読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

イマヌエル・カント『たんなる理性の限界内の宗教』(原著 1793, 岩波書店カント全集10 2000)

理性は限界を超えて働こうとする傾向があるため、逆に理性の限界内にその働きをおさめることこそ難しい。『たんなる理性の限界内の宗教』では内なる道徳法則にかんがみて、真の宗教は理性的な道徳的宗教のみとし、既成の啓示宗教を批判的に考察しつつ、最終的にはひとつの宗教として収束していく必然性を説いた遠大な視点からの宗教啓蒙書。
個々の国や言語による縛りからの離脱解放とともに、共同体宗教から離脱解放され、人間にもともとそなわる理性的な実践のうちに活動するひとつの世界が成立する必然性を説くカントからは、夢想家や預言者を超えた思索家の厳しさと揺るがない信念が伝わってくる。
実際には実現は不可能であろうというようなことは一言ももらさず、人間の本性から収束していくであろう行く先のみを語り続けるその姿勢には驚異的なところがある。

www.iwanami.co.jp

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【目次】
たんなる理性の限界内の宗教
宗教哲学序文準備原稿
たんなる理性の限界内の宗教のための準備原稿

【付箋箇所】
11, 13, 35, 48, 55, 63, 67, 70, 76, 123, 128, 143, 153, 164, 166, 169, 174, 201, 225, 254, 308, 309, 326, 332, 343, 431, 434, 440, 443

イマヌエル・カント
1724 - 1804
北岡武司
1948 -