自然から離れ人工的な技術によって人間となり、そのプロセスを今なおつづけていることを思索の中心課題として、技術と時間について根底的に考えることを選択した現代哲学者スティグレールが、自身の過去と哲学することのはじまりについて初めて語った講演録。
フランスのエリートコースからは外れ、職業を転々とした後にジャズバーを開店するも経営に行き詰まり、酒と薬に溺れ、金銭的苦境から数度の銀行強盗をはたらいた末に逮捕拘留されることになる。1978年から83年までの5年間の独房生活の中で日々自分の中で意味と無意味が変化していくさまを見つめ、知人の哲学者のサポートのもと徹底した読書と哲学的思索に没頭することになる。言葉をはじめとする他なるもののただなかで私が生み出され、その私が変容していくプロセスが終わることなくつづけられていくことに思いを致しつつ、悪しき循環に陥る状況について批判的に考察しながら、良き期待を育むすべを学ぶことを自らに課した一人の人間の姿が自分の口からストレートに語られている。その特異な経歴から生まれた鋭い思索と問題意識は、現代社会の病理の只中に起立して、視聴者や読者を惹きつけている。スティグレールの哲学の根底を知るにはもっとも適した一冊。
【目次】
内奥の秘密
哲学と天職
現実態で哲学すること
個体化のプロセスにおける「私」と「われわれ」
個体化における無‐知と、哲学の現勢化の始まり
起源の問いと知の欲望
法を侵すこととしての「行為への移行」
想起
真実を語る必要性
偶然から哲学をする
飛び魚のように
ヒュポムネーシスと死にゆく定め
世界の欠如における異‐常
私の自由、ヒュポムネーシス、世界の必然性
自由の脆弱さ
沈黙の中から湧きあがる声
「場」を与える――局所性の発明
意味するもののイディオム
意味生成と無意味化
「我」の中の「他」
物質と精神――刑務所の前
二五年後
忠実、不実
法への忠誠
【付箋箇所】
10, 15, 19, 22, 30, 41, 45, 60, 68, 72, 85, 95, 100, 103, 106, 113, 129, 133
ベルナール・スティグレール
1952 - 2020